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2023年06月06日

パラサイト

昨夜は新宿ミラノ座でパルムドールやアカデミー作品賞にも輝く韓国映画「パラサイト〜半地下の家族」を原作にした鄭義信台本・演出「パラサイト」を興味深く観たが、イチバンの興味は映画として完璧だったあの作品をスペクタクル面を含めて舞台で一体どう再現するのか(?_?) あるいはタイトルと大枠だけ借りたゼンゼン別個の作品として成立させるのか(?_?) という点だった。「梁山泊」の鄭義信演出だから、ひょっとしたら本水を盛大に使って映画の半地下シーンを再現するのではないか?と期待もしたが、さすがにそれはなかったものの、低所得層の家族が富裕層の家へ徐々に侵入してパラサイトする過程や方法はほぼ原作通りに序幕で展開され、映画を全く知らない人だと(?_?)エ? となりそうだけど、あれだけの名画を観ずにこの芝居だけ観に来る人はまずいないことを前提に、たった2場面を交互に見せつつ大変スピーディに中抜きであっさり進行させる脚色はなかなかのものだし、高台の豪邸と下町の長屋という設定を巧く再現した装置とその転換も見ものだろう。原作と大きく違う点は物語を日本の阪神地方を舞台に1995年の大震災直前に設定してあることで、2幕目になってそれが大きく打ち出されてくるから、映画の洪水に対して、こちらは火災がビジュアル面での大きなインパクトになっている。映画の衝撃的な終局も何とか活かしてはいるものの、この点は映画を観ているとショッキングさが薄まるのは無理もなかろう。今回の上演は映画のソン・ガンホの役を古田新太が演じるなどキャスティングも魅力の一つだが、映画との一番の違いは格差社会の現実を日本の俳優陣は韓国の俳優陣ほど生々しく伝えられていないことで、芸達者な古田も持ち前の愛嬌でごまかす役作りしかできないのは台本・演出のせいでもあろうし、それは日本がまだ韓国ほど厳しい格差社会になってはいない現実というよりも、それが巧みに隠蔽されて表面化しにくい日本社会の現状を反映しているせいかと思われた。役者の中では伊藤沙莉が最後のほうのセリフで最も迫真性を感じさせた点が印象深い。


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