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2022年11月25日

ツダマンの世界

今日は午後からシアターコクーンで松尾スズキ作・演出「ツダマンの世界」を観劇。昭和の戦前を舞台にして、生い立ちに問題を抱える私小説作家ツダマンこと津田万治と彼をめぐる女性たちの関係、弟子や文壇のボスとの葛藤が描かれているというふうに書けば何だか暗くて辛気くさいドラマのようだが、そこは松尾スズキなのでブラックなエロチシズムに満ちた破天荒な展開になってクスクス笑いが絶えない舞台であった。戯曲が勝手に書き替えられてアカの劇団で上演されたことでツダマンが徴兵されたり、空襲下のシーンが出てくることで戦争を描いている側面もあるとはいえ、一貫して描かれるのは一見つまらない人生を送るかに見える人びとの微細な心の揺れだったりする点がいかにも私小説作家の世界っぽいし、物書きの心情のみならず書かれる側の心情を吐露させるあたりはみごとである。その書かれる側の女ツダマンの継母役と妻を吉田羊が好演しており、ツダ家の女中役で劇全体の狂言回しを務めた江口のりこのナチュラルな関西弁も印象に残った。主演の阿部サダヲは相変わらず達者な演技人だが、今回ツダマン自身は敢えて空っぽな人間として描かれているために役作りが相当難しかったに違いない。片や文壇ボスの大名狂児は実にくっきりしたキャラになっているので、皆川猿時が例のキレ演技を存分に発揮できた感じである。今回は松尾スズキ本人の出演がなかったものの、随所に挿入される劇中歌を作詞作曲しており、それらがまたいかにも昭和初期歌謡風のメロディなのがおかしくて実に器用な才人ぶりを見せてくれたし、吉田羊らの女優陣も昭和初期の女が彷彿とするポーズを随所で見せてくれるのがウレシイ。


コメント (1)


とても面白そうです
そのうち、NHKBSとかで、やってほしいです

戦時下だったり、終戦直後だったりしても、日常は続いているのですね
つい最近、荷風が熱海に疎開していて、養子が熱海から、東京の暁星中学まで通学していた、というのを読んで、びっくりしました。昭和20年の9月って、そんなに普通の暮らしがあったんだ、というのが驚きでした。
そしてまた、新幹線の無い時代に、熱海から東京って、どのくらい時間がかかったんだろう?と、驚くのです。
そしたら、クレヨン王国とか絵本なのか漫画なのか知らないけど、その関連の方のサイトに、
「父は、熱海から早稲田まで通学していた」と書いてあって、しかも都内まで通勤通学する人たちで満員だったというのにも、驚きました。満員の中、3時間かけて、行ってたのだと。
えっ、東京って、焼け野原だったということだったけど、そんなに通勤通学する所が残っていたのですね
ほんとに、変わらぬ日常もあったのですね
あ、11月の歌舞伎座
團子ちゃんが、見れて嬉しかった
花魁には、背が高すぎるんじゃないかと思ったけど、いい感じです。
そして、通人の鴈治郎さん、楽しいです!
なんかの取材で、
「もうね、2人目をくぐったら、何やってもいいから」とお話してたように、ちょうど前夜のドイツ戦勝利のあとだったから、その話に、会場は拍手喝采でした
私、27日のチケットも買ってます(仁左衛門さんと玉三郎さんですもの、買っちゃう)
19時から試合開始だし、何を話してくださるのか、楽しみだなぁ

投稿者 せろり : 2022年11月26日 01:53

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