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2022年02月09日

天日坊

コクーン歌舞伎は結構マメに観ているほうだが、評判が良かった本作の初演はなぜか見逃していたので、オミクロン株にもフィギュア男子SPライブ放送の誘惑にも負けず、さすがに空いてるかと思われた昨日のマチネを観に行ったところ、意外や意外、客席は満杯状態だし高齢のお客さんも結構多かったのにちょっと驚かされました (!_+) 要はそれだけ期待された舞台だったわけで、コロナ禍による上演時間の短縮もあってさすがに初演の迫力や衝撃度には及ばないのかもしれないけれど、十分に見応えのある舞台だったので千穐楽まで何とか無事に公演が続けられるよう祈りたいものである。
原作はいわゆる「天一坊騒動」をベースにして源頼朝のご落胤を騙る天日坊が実は木曽義仲の息子だったというドンデン返しの、まるで並木正三の作風を借りたみたいな河竹黙阿弥の初期作品で、これを宮藤官九郎がアイデンティティの揺らぎやすい若者の「自分探し」として脚色したことで、極めてビビッドな現代性を獲得した点が成功の一番の要因かもしれない。そしてそうしたアイデンティティの不安定な若者が次々と新たな事態に見舞われる中で毎度のように「マジか〜」と狼狽えながら奇怪な現実を受け容れて行かざるを得ない心理の揺れを、主演の勘九郎は父勘三郞とはひと味違った彼ならでは現代人らしい感性でビビッドに表現している。主人公の大日坊を反体制の旗印として押し立てようとする盗賊の地雷太郎を獅童がカッコ良くもまたコミカルにも柔軟に演じていて、同じく女盗賊に扮した七之助もこれぞ本役という出来映えで、舞台を華やがせ大いに盛り立てている。生演奏によるBGMの曲風や、ワゴンステージによる転換や舞台美術や衣裳も含め「コクーン歌舞伎」の中では串田和美演出らしさが最もよく出ている作品ともいえそうで、初演の大好評も今回ようやくナルホド!!と納得されたのでした(*^^)v


コメント (1)


「高齢のお客様」の一人でした。10年前松本市民芸術館の最終日、最終シーン、天人坊の頭上に現れた勘三郎さん、思い出して涙がでました。今回、誰にも内緒で、どうしても観劇したくて、おもいきって観劇して、本当によかったです。今回の頭上の方はどなただったか、勘三郎さんの映像か、あるいは、串田さんだったのか、白井さんのお役を今回は、扇雀さんがまた一味違った久助で、勘九ろうさん、七之助さん、獅童さんのあいかわらずのカッコよさなど
くどかんさん、串田さんにお礼を申し上げたい気持ちです。松井先生のご感想、嬉しく拝読いたしました。

投稿者 和光 順子 : 2022年02月10日 10:56

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