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2021年05月13日

終わりよければすべてよし

昨夜はさいたま芸術劇場のシェイクスピアシリーズ第37弾「終わりよければすべてよし」を観劇。コロナ禍にもめげず文字通り満杯(!_+)の劇場を久々に見て「密」を恐れず生の舞台を好んで集った闘志溢れる人びとによるカーテンコールの大歓声ならぬ大拍手にはしばし目頭が熱くなったものである。作品がまた意外なほどコンテンポラリーで同シリーズの掉尾を飾るにふさわしい演目だったことや、適宜なキャスティングと満を持した役者たちそれぞれの充実した演技と緊張感に支えられた舞台の迫力がみごとに観客を感動させたともいえそうだ。
ところでタイトルのみ有名ながら、余り上演されることなくストーリーはさのみ知られていないこの作品の何がコンテンポラリーかといって、翻訳の松岡和子氏曰くシェイクスピア劇中「唯一無二のキャリアウーマン」のヒロインが恋する男性と結婚するストーリーのなかで、そもそも結婚とは男が女をゲットするのではなく男が女にとっ捕まることなのだという古来の寓話が活き活きした今日性をもって蘇る点であろう。とっ捕まる可哀想な男性のほうは一時オトコ社会を象徴する軍隊へと逃げ込み、男性に逃げられた女性のほうは義母を味方につけ娼婦たちともしたたかな連帯を組んで最終的にみごとにとっ捕まえることに成功する。こんなふうに書くと何だか恐ろしげなヒロインに感じられるかもしれないが、主演の石原さとみは健気な愛らしさを存分に発揮して観客をも味方につけ、とっ捕まるヒーローのほうは藤原竜也が、もうこの人以外のキャストは考えられない!柔軟性のある好演を見せ、両親を亡くした設定のヒロインを親代わりに温かく見守る王と義母役の吉田鋼太郎と宮本裕子がしっかり舞台を支えていた。ほかにもオトコ社会における典型的な落ちこぼれ男をカリカチュアしたような役に扮した横田栄司の、かつての吉田鋼太郎を見るような達者な演技がとても印象的だった。
とにかく世界中で舞台芸術が危機に瀕する今だからこそ、地元さいたまで昨夜のように素敵な観劇の時間が持てた歓びは非常に大きく、昨夜は早くに就寝してぐっすり眠ってしまい、京都で深夜に父が亡くなったのを知ったのはけさのことである。容態がかなり悪いのは知っていたものの、昨夜の観劇と今日の午後に新聞のリモートインタビュー取材を済ませてから帰郷するつもりで、最後の見舞いが叶わなかったのは残念だった。母親の時は危篤状態が長引いたため何度も往来して結局死に目に会えなかったし、今回はコロナ禍でそう往来ができないと思い帰郷を遅らせたのが仇になったのも皮肉な話だが、これもそういう親子の縁だったと悟るしかない。
そんなわけで今後しばらくブログの更新を休止しますが悪しからずご了承ください<(_ _)>


コメント (4)


ご尊父様の逝去に、心よりお悔やみ申し上げます。
カウンターでの凛とした佇まい、鮮明に思い出されます。

投稿者 Y.O. : 2021年05月13日 18:07

在りし日のお姿を偲びつつ 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

投稿者 黄すみれ : 2021年05月14日 05:49

京都新聞にてお父様の訃報を知りました。ご冥福をお祈りいたします。

投稿者 高姓久美子 : 2021年05月14日 11:52

お父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
「終わりよければすべてよし」上演初日を見届けての訃報とのこと、昨年末の松岡さんを囲んだ完訳記念の祝宴を思い出しました。全37作のうち7・8作観ましたが、今回はコロナ禍で残念でした。昨日「あさイチ」でこの舞台と松岡さんが紹介され、昨年の同番組の松岡さん特集を見逃し悔やんでましたが、これで仕事ぶりが垣間見れて有難かったです。

投稿者 ウサコの母 : 2021年05月19日 22:12

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