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2019年05月23日

第10回朝日小説大賞授賞式会食

今夜は第10回朝日時代小説大賞授賞式の後、受賞者の森山光太郎氏、選考委員の縄田一男氏、朝日新聞出版社の各氏と新橋の鳥割烹「末げん」で会食。ここは三島由紀夫が自刃する前夜に楯の会メンバーと会食したことで知られ、原敬や六代目菊五郎もよく訪れていたという老舗料亭だが、三島を見送ったという女将から最後の夜の様子や、彼は子供の頃からこの店をよく訪れていた話を興味深く伺えた。
受賞作の「火神子〜天孫に抗いし者」は選考会で縄田さんと意見が真っ二つに割れて私が強く推した作品だが、推した理由は日本における「王権」の成立を真っ向から取りあげて、それを東アジア史の中に位置づけるというスケールの大きさとユニークな視点を買ったことである。一口で大ざっぱにキャッチーな紹介をすると神武天皇VS卑弥呼の闘争を描いた古代史ロマンというべきか。後に神武天皇に擬せられる侵略者が凄惨な殺戮を重ねながら日本を一つの国として統一しようとする一方で、被征服者として滅亡に瀕した土着の一族から後に卑弥呼に擬せられる女王が誕生するという展開は実に突飛なようでいて、著者はかなりマニアックに古代史に精通した上で大胆な仮説を試みていることが窺えるし、またそれをわりあい等身大的な人物の心情で肉づけしているあたりが実にイマ風というか、アニメ世代にも共感を呼ぶような設えなのは著者自身が27歳の若さの賜物でもあろう。若くてもハードボイルドな文章力は確かであり、受賞以後の改稿によってかなり読みやすくもなっている。ただ古代モノは人物名からして取っつきにくいのは確かだけれど、近ごろ天皇ブームともいえそうな風潮の中で日本の古代史にご興味のある方にはオススメしたい。


コメント (1)


卑弥呼と天皇の闘争は面白そうですね。

普通にコメント入れようとしたら、妙な動きがありました。何かの罠やバグなど(マルウェア?)仕掛けられているの?全くよく分からないので単なる気のせいかもしれませんが。

天皇制が始まった頃の物語のようですね・・・。

投稿者 nao : 2019年05月23日 22:52

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