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2019年02月09日

ヘンリー五世

日本で余りメジャーではない同作品の上演をワタシは去年初めて観て意外に面白い戯曲であることは既に紹介済みだが、16世紀の英仏開戦の決定から講和条約の締結に至るまで全編「戦争」を主題に王侯から一兵卒に至るまでのさまざまな葛藤を一つの舞台に収めたこと自体ユニークな戯曲といえるのかもしれない。ただ史劇の性格上、主題を忠実に描こうとすればそもそもここで描かれる戦争に正当性があったかどうかを検証する前ふりに始まっていささか冗長になる観は否めないし、日本人にはピンとこないであろうシーンやセリフも多いためか、今回は原作を大幅にばっさりとカットして大胆にテキストレジした上演となっている。そのことには恐らく賛否両論あるにせよ、全体に運びがスピーディで飽きさせず且つ非常にわかりやすく仕立てられている点は可とすべきだろう。多くの人に何ら予備知識がないという意味でのマイナーな作品を上演する際には恐らくそれが最も有効なスタンスともなるはずだ。ただしカットし過ぎて感興を削ぐ点も多々あるのは確かで、ことに原作だと「戦争」における女の立場と果たす役割が前半でもしっかり且つ皮肉に描かれているにもかかわらず、そこがほとんどカットされてしまったため、終幕の大団円は実に底が浅く感じられてしまう印象を否めないのである。結果、戦場における「王の責任」を問われ、非情の王権を得て若き無頼の日々を抹殺する人間に成長した振れ幅の大きな演技を要求されるタイトルロールを松坂桃李が期待以上の好演をしていただけに、シェイクスピアというより少女漫画原作みたいな感じになっちゃったフィナーレはちと残念。ともあれ松坂桃李の演じるタイトルロールを思いっきりフィーチャーするスターシステム型の演出を考案した吉田鋼太郎は前作「ヘンリー四世」の映像を幕開き冒頭に流して自身のフォルスタッフ姿を見せもするが、今回はいわば口上役でマイナーなこの芝居を観客に何とかわかりやすくすることに徹する姿が自らの演出を象徴しているのかのようだった。ほかに印象に残ったのはウエールズ人の大尉に扮した河内大和の怪演ぶり。


コメント (1)


『ヘンリー五世』は入ってたか定かでないですが、ずっと前、コミックで『リチャード三世』が出てくるのを読んだ気がします。『ガラスの仮面』のマヤの男版みたいな、たぶん大和和紀『Killa』かな。あれに、ヘンリー四世とかヘンリー五世も出てきたのかな。すいません、記憶、おぼろです。
私は最近読んだ古代ローマの料理についての本で、カトーの農園というのが、びっくりでした。ギリシャ文学は英雄たちの冒険、2大叙事詩で始まりましたが、ローマ文学は喜劇と農業書で始まります、ということで、全体が残ってる古代ローマの文献は、農業への投資についてをまとめたものです、というものです。
投資!日本が弥生時代の頃、かの地では、すでに投資というものが語られていたのですか?!
それとは別に、顔真卿展を見に行ったのですが、春節で中国人韓国客いっぱいで、とんでもない混雑でした。祭姪文稿の長い列に横入りしてきた女性に注意すると、中国語で反発。係員に言ってもらっても、なかなか退かない。「あそこから、私たちの前にすーっと入り込んできたんですよ」と強調。やっと出て行った。
諦めないで、ひとつずつルール違反を指摘するというのが、末端の庶民にできることと思います。少しでも、不快を解消したいなら、そういう泥臭いことをしないとダメだと思います。

投稿者 せろり : 2019年02月10日 23:10

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