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2017年12月01日

クラウドナイン

12/1は池袋の東京芸術劇場でキャリル・チャーチル作・木野花演出「クラウドナイン」を観る前に近所で食事。
この芝居は80年代初頭にパルコ劇場で佐藤オリエや菅野忠彦ら、いわゆる新劇陣で上演され、松岡和子さんの翻訳ということに当時は気づかなかったものの、非常に面白く且つ感銘深く観た記憶があるが、今回久々に観劇して、少しも腐らず古びない名作であることが改めて再認識された格好だ。
一口でいうとフェミニズムの芝居なのだけれど、劇全体の構造とユニークな仕掛けによって、そこに教条的な臭みは微塵も感じさせず、むしろ随所で笑いころげて、ラストでは中高年女性なら誰しもグッと胸が詰まって目の潤む思いにもさせられよう。前半は英国ヴィクトリア朝の植民地を舞台に、男女の関係もまた支配と被支配という前世紀的なジェンダーに縛られながら虚飾に充ちた家庭がスラップスティック風に描かれ、後半は既にいわゆるLGBTが当たり前になった現代社会を背景に、性の快楽や愛のありようは一様でなく決して辻褄も合わない現実が赤裸々に語られていくなかで、それでも人は自らをそのまま受け容れられるようになったことの幸せに気づかされる仕組みである。思えば30年前に観た当時は舞台上で性的な表現が余りにも生々しくなされることに半ばあっけに取られて見逃していたような気がするが、LGBTの問題を日本の国会ですら取りあげるようになった今日に改めて観れば、前半と後半が一貫してラストシーンにつながる劇構造の妙もはっきりと窺えて、より深く感動できたのかもしれない。伊勢志摩や平岩紙、正名僕藏、宍戸美和公といった大人計画を中心としたメンバーに高嶋政宏らの客演が加わった俳優陣の健闘を得て、より現代的でナチュラルなテイストに仕上がっていたのも大きいように思う。


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