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2017年10月06日
ガパオライス&クイティアオのセット
恵比寿のマシン治療に行く前に大宮ルミネの「マンゴーツリーカフェ」で食事。
カズオ・イシグロの名前はずいぶん前から知っていたが、初めて読んだのは十年ほど前で、『わたしを離さないで』が恐らく日本で刊行されたばかりの頃だったかと思う。イラストレーターの百田まどかさんからお薦めを受け、といっても「読んだら辛くて堪えられないかもしれないけど文句はいわないでね」と釘を刺され、それでいてどういう内容なのかは全く教えられないまま読んだので、最初は何について書かれているのかも理解できないくらいだった。とにかく淡々とした筆致で進行し、読み進めるうちに内容の深刻さがじわじわと伝わって、ラストページのシーンでは読み返すのも躊躇われるくらいの重い衝撃に打ちのめされたのを想い出す。私の数少ない読書歴では五指に入る名作中の名作で、非常に抑制的な文体が確かに旧来の日本人的な表現力と重なり合うところがあるように思われた。以来、色んな方にお薦めしていて、翻訳家の松岡和子さんにもお薦めして感謝されたようにも記憶する。英国の映画版がまた素晴らしい出来映えなので、ご覧になってらっしゃらない方にはこちらもお薦めだ。蜷川演出で舞台化もされたが、演劇には余り向かない作品のように思われた。ビックリしたのはTBSのTV化で、こんな作品をよくぞテレビドラマにしようなんて思ったもんだ!と当初はいささか呆れていたのだけれど、たまたま二、三回見た限りではそれほど悪い出来ではなかったし、主人公役の綾瀬はるかの演技も抑制が利いてこの作品の持ち味を十分伝えているように感じられた。
コメント (1)
「私を離さないで」当時読んで「このテーマをこういうふうに書けるのか」と非常に驚きました。映画とテレビドラマも観ましたが、個人的には作品を読んだときの衝撃と感動には及ばなかったです。
投稿者 ちえこ : 2017年10月07日 09:36