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2017年09月08日
ビリー・エリオット
映画「リトル・ダンサー」を元にしたこのミュージカルの本邦初演は七月に赤坂ACTシアターで開始されたので、既にご覧になっている方も大勢いらっしゃるだろうが、私は先日シアター・コクーンで翻訳家の松岡和子さんから評判を聞いて、その時に同行していた文春の内山さん共々チケットをお願いし、昨晩拝見したのだけれど、一口にいって日本でよくぞこんなミュージカルが上演できるようになったものだと感心しきりだった。映画の題名でもわかるように主人公はちびっ子のダンサーのタイトルロールが主役のため、まずその役をこなせる少年俳優がいないと舞台が成立しないのである。で、一般公募のオーディションで勝ち抜いた四人がクアドラプル・キャストで演じているらしく、私がたまたま観たのは加藤航世という中2の少年なのだが、演技力、歌唱力、さらにはバレエのテクニックをふんだんに盛り込んでアクロバティックにすら見せるダンスシーンにおいてもオトナ顔負けの抜群の能力を発揮して舞台をぐいぐい引っ張ってゆき、名実共に主役を張ってることにまず驚かされた。彼の親友でゲイっぽい少年の役を演じた古賀瑠も実に達者で且つ花のある子だったし、女の子の子役も大勢いていずれも達者だったから、日本は芸能界だと今やこうした立派な人材がちゃんと一般公募で獲得できる時代になったのに、政治の世界は何故そうならない!なぞとヘンな腹の立て方をするはめに(^_^;)
ともあれポピュラリティのあるエルトン・ジョンの作曲で綴られたこのミュージカルのストーリーにも一応は政治的な背景があって、サッチャー政権時代における産業構造のリストラで職を追われる炭鉱労働者のストが一方で進行し、そうした労働者の息子ビリーが全くの偶然で出会ったバレエに魅せられ、非常に無理解な環境の中でプロのダンサーを目指し、彼の天性の才能が次第に周囲の理解と協力を獲得していくという展開は、労働者と中産階級、上流階級が文化的に断絶する英国らしいドラマだが、世界中が産業構造の大転換期に直面している今日では極めて普遍的なテーマともいえそうだ。炭鉱夫でありながらも息子ビリーの世界に何とか共感しようとする父親の役を吉田鋼太郎がそつなく演じて且つ歌も聞かせるし、少々ボケかけたビリーの祖母役を演じる根岸季衣がみごとに歌って美しいスタイで踊るのを観ながら、この人ワタシよりゼッタイ年上のはずなのに!と思ったのでした(^^ゞ
なお明日はミサイルが東京上空を通過することはあっても、いきなり富士山に落とされることはないと信じて、また御殿場の馬術競技会に参りますので、ブログの更新はお休みさせて戴きます<(_ _)>