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2017年04月27日

2017・待つ

演劇界の巨星が墜ちて早くも一年が経とうとする今、彼の遺児たちともいえるニナガワスタジオを中心にゴールド・シアターやネクスト・シアターのメンバーを含めてのさいたま芸術劇場公演「2017・待つ 」は、まず簡単な結論からすると予想以上に見応えがあり、マスメディア的スターを主役に起用した商業演劇的な舞台で脇をしっかり固めた蜷川チームの底力を見せつけた舞台といえそうだ。役者各位がチョイスした戯曲を元にそれぞれのエチュードを繰り広げるオムニバス形式であり、チョイスされた戯曲もシェイクスピアあり、アラバールあり、清水邦夫ありとスタイルもバラバラだし、また共通するモチーフもはっきりあるわけではないが、それでいて現在を生きる私たちに示唆的な何かを有する作品が選ばれているように感じられたのは、演劇における現在との接点を絶えず意識し続けた故人の遺志を汲むメンバーの舞台だからこそかもしれない。たとえば現在を生きる私たちにとって切実なテーマである「老い」の行方をシュールな感覚で追求した前田司郎作『逆に14歳』は、最近私が観た舞台の中で最も刺激的な面白い作品であり、主演した岡田正と大石継太にはこの作品の上演を今後も何らかの形で長く続けてほしい気がしたものである。大人数の作品としてはオールドの起用が功を奏した『戦場のピクニック』があり、驚くほどコンパクト且つスピーディに仕上げた『十二人の怒れる男』ありと、非常にバラエティに富んだ全8作品が一気に見られるという体験も頗る新鮮だった。


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