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2016年10月07日

るつぼ

今日は『料理通異聞』刊行記念お食事会の〆切りをよそに渋谷のシアターコクーンでアーサー・ミラーの傑作『るつぼ』の観劇。
アメリカ建国時代の17世紀末、単なる少女の集団ヒステリーがきっかけで魔女狩り裁判が進行し、絞首刑と拷問死併せて20名もの犠牲者を出した実際の事件をモデルにして、共同体と個人の尊厳をめぐる危うさを描いたこの作品の舞台を前回見た時は、秀作だけどシンドイ芝居だな〜思ったにもかかわらず、今回また観る気になったのは、集団ヒステリーの中心となったカリスマ的な少女アビゲイルの役を演じる黒木華が見たいからだった。結果、彼女はもちろん芝居全体が面白く見られたのは、オーソドックスでわかりやすく且つきめ細かな演出をしたジョナサン・マンビイの勝利ともいうべきか。アンドリュー・ワイエスの絵を想い出させるような衣裳や照明を含めた舞台美術が美しいことや、少女たちの集団ヒステリーを舞踊的に処理したワザも加点に値する。ただ若干せりふが聞き取りずらいシーンもあって、それは一つにはキリスト教のピュリタリズムを背景にした内容が日本人に馴染みにくいせいもあろう。とはいえ劇中で進行する事態はまんざら他人事でもなく、日本の戦前の赤狩りを思わせるような弾圧による「転向」で個人の真実がねじ曲げられていく社会の恐ろしさを描いており、実際にアメリカでは50年代に起きたマッカーシーのアカ狩りの寓意として書かれた作品だけに、集団ヒステリー的現象が多々見られて何やら今後の危うさが予感される日本社会でも非常に寓意に富んで面白く見られるのだった。狂騒化して暴走する集団の中で、最後の最後は自らの命に代えても個人の心にある「善きもの」に目覚めてそれを貫き通そうとするジョン・プロクターはいかにもアメリカ的な主人公とはいえ、堤真一はラストのセリフを感動的に聞かせて、この作品の持つ普遍性を伝えることに成功している。シンドイことはシンドイけれどとても見応えがある芝居なので、それなりの覚悟をしての観劇をオススメします。


コメント (1)


締め切り終わりましたね。ドキドキしながら結果を楽しみにしています。一応申し込みましたが、今のところ安心して予定が組めないので余計にドキドキしています。
 申し込みと言えばここ数年母のために紅白観覧を申し込みしているのですが、全く当たらず、これから奮起して申し込みするかっと意気込んでいます。

投稿者 nao : 2016年10月08日 01:18

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