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2014年10月21日

根岸散歩

畏友森まゆみさんとは長らくお会いしていないので久々に一度お目にかかりたいな〜と思っていたら、幸いポプラ社の倉澤さんが双方の担当編集者だったので今日の再会をセティングして戴いた。
森さんは今さら言うまでもなく「谷根千」の名編集長で、「根」は「根岸」ではなく「根津」なのだけれど、現在正岡子規の評論を「波」に連載中で当然ながら子規庵のある根岸周辺にも詳しいし、私は私で新聞連載を予定している江戸時代の小説に酒井抱一が重要人物として登場するところから、抱一が後半生を送った雨華庵の跡地を見たいということもあって、三人で根岸を散策することにしたのだった。で、森さんは急用のため日暮里駅での集合時間に間に合わなかったので、まずは二人で文政年間から続く羽二重団子の店 (写真上)でお茶をして、それから雨華庵跡を探したのだが、道がとんでもなく複雑で迷いまくって、ようやく所番地を見つけたのはいいけれど、そこは現在ネット上で見られる建物が新築マンションに建て替わっており、掲示板ひとつ見当たらないのでガックリ(v_v)とはいえ大体の位置関係が把握できたのを可としつつ、森さんと落ち合うことにした子規庵に急いで向かうも、これがまた迷いまくって根岸の道は恐るべし!と思いながらも、道を訊けば親切な方がわらわらと寄って来てくださることに旧き日本の町の良さを感じたものである。
ようやく子規庵に辿り着くと、そこには森さんのみならず、これまた江戸初期よりの老舗豆腐料理店として有名な「笹の雪」の現当主奥村雅夫氏がお待ちになっていて、なんともゴージャスな案内人おふたりから子規や抱一のことをいろいろと伺った次第。子規が晩年を過ごした家を解体修復しながらもそっくり残した子規庵はNHKドラマ「坂の上の雲」で見た通りの印象で、庭には子規が句に詠み込んだ植物が今でもしっかり栽培されていることにも感心し、庭に降りて森さんとツーショット(写真中)。
連載予定の小説は同じ江戸時代からの老舗料理店「八百善」をモデルしたものだというのは少し気が引けたのだけれど、「笹の雪」のご主人はそんなことをちっとも気にせず本当に親切にいろいろと教えてくださって、近くにある「永称寺」が根岸で唯一浄土真宗本願寺派の寺院だから、抱一に所縁のある寺に違いないとのご推測のもと、さっそくこのお寺を訪ねたところ、突然の訪問にもかかわらす、ご住職が現れてこれまた親切にいろいろと話してくださった。この寺の伝承によれば、抱一と谷文晁、大窪詩仏の三人がここに寄宿していた時代があって、三人による三幅対の絵も残されているとのこと。この絵は保管状態の問題もあって現在は非公開ながら、本堂にご案内戴いて抱一の書による聯を見せて戴いたのは、まさに僥倖ともいうべき成りゆきである。「笹の雪」のご主人からも江戸時代から明治にかけての根岸周辺地図を何種類かコピーで頂戴するなど、今回こちらは全く行き当たりばったりのリサーチだったのに、すべて僥倖といいたいような大変な収穫が得られたのは、やはり森まゆみさんという素晴らしい案内人のおかげであり、再会をお膳立てをして戴いた倉澤さんにも、改めてここに感謝を申しあげます<(_ _)>晩ご飯は当然ながら「笹の雪」であんかけ豆腐等をおいしく戴き(写真下)、そのあとまた森さんにご案内戴いた貝屋「うぐいす」では美味しい貝をふんだんに食べながらさまざまな社会問題を熱く論じ合い、次はふたりの共通の知人である翻訳家の松岡和子さんも交えての再会を約しつつお別れした次第であります。

庭から見た子規庵

抱一や谷文晁らが寄宿していたという永称寺

森さんに界隈をご案内戴く途中に現れた、明治の外交官、陸奥宗光が住んでいたままに保存された洋館



コメント (3)


こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。
酒井抱一、山谷の八百善、亀田鵬斎、谷文晁、地域雑誌30年の間に聞きかじったけどそれ以上調べなかった人たちのことがご一緒したおかげで何となく分かって勉強になりました。江戸に入ると骨がらみになると思って、近代だけに禁欲しておりますが、江戸は老後の楽しみにと思っていたらもう老後に入ろうとしておりまする。
私には明治の根岸、松井さんには江戸の根岸が浮かんでいる珍道中でした。懲りずに遊びにきてね。

投稿者 森まゆみ : 2014年10月22日 10:40

はしめでこのページを拝見いたしました
西東敬三と申します

小職の仕事はNPO法人江戸琳派継承会の裏方を務めております、理事長は酒井抱一家7代目酒井抱美です。

只今は江戸琳派絵画作品展の準備ですが酒井抱一・亀田鵬斎・谷文晁等々略歴から全ての資料作り三昧です。

先月から奥村雅夫様にも御縁が有りまして打ち合わせの会を重ねております。

是非 小説を楽しく拝読させていだきます

投稿者 西東敬三 : 2017年02月15日 17:28

はしめでこのページを拝見いたしました
西東敬三と申します

小職の仕事はNPO法人江戸琳派継承会の裏方を務めております、理事長は酒井抱一家7代目酒井抱美です。

只今は江戸琳派絵画作品展の準備ですが酒井抱一・亀田鵬斎・谷文晁等々略歴から全ての資料作り三昧です。

先月から奥村雅夫様にも御縁が有りまして打ち合わせの会を重ねております。

是非 小説を楽しく拝読させていだきます

投稿者 西東敬三 : 2017年02月15日 17:28

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