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2014年08月07日
ロミオとジュリエット
さいたま芸術劇場のニナガワ×シェイクスピアレジェンド第一弾としてオールメール版すなわち全員男性による上演がなされた今回の「ロミオとジュリエット」だが、まるで初めて観た作品のように新鮮に感じられた理由の一つには舞台の使い方もあるのだろう。従来のプロセニアムアーチの内側を使った平面的な舞台ではなく、劇場空間の四方にイントレ(鉄パイプの足場)を高く組んで、中に客席と本舞台を封じ込めた形体は、有名なバルコニーのシーンやラストの墓場のシーンはもとより、モンタギュー派とキャピュレット派の闘争にも有効に活かされ、観客までが両家の争いに巻き込まれる雰囲気になるのだった。が、何よりも新鮮なのは若手の役者たちであろう。中でも菅田将暉のロミオは「おお、ロミオってこんなヤツだったのか」と現代の若者を共感させるスタイリッシュな感性に満ちた激情型の青年として登場し、旧来の観客を驚かせてくれる。片やこの人がいなければこの作品のオールメール版は不可能ともいえそうな月川悠貴のジュリエットがずいぶんオトナびた少女を感じさせるあたりがまた、いかにもイマドキの男女関係なのである。最後はアッと驚くような幕切れが待ち受けていて、それをいかにもニナガワ演出らしい蛇足とする向きもあろうが、私には現代の混沌とした世界を反映させた強いメッセージとして受け取れた。ともあれこの作品はストーリーがあまりにも知られているせいか、まるで歌舞伎を観るように、バルコニーやベッドインした恋人たちのセリフのみを聞きどころとして、それ以外はなんとなく聞き流してしまう傾向にあるのだけれど、今回はオールメールとあって幕開きから観る側も新鮮な気持ちでいられたのだろう、ベテラン原康義のロレンス神父を始め各人物それぞれのセリフもきっちり耳に入ってきて、シェイクスピアのの豊かなレトリックに圧倒され、新たな発見も多かった。それだけに、初日でまだセリフが少し頼りない役者もいたのはちと残念でした。