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2013年04月05日

木の上の軍隊

渋谷シアターコクーンでこまつ座&ホリプロ公演「木の上の軍隊」を見る前に東急レストラン街で食事。
第二次大戦の掉尾となる沖縄戦で、終戦後一年半ほどのあいだ伊江島のガジュマルの木に隠れて戦争を続けていた兵士の実話をもとに井上ひさしが構想を温めながら、ついに執筆に至らなかった作品を、若手劇作家の蓬莱竜太が書き継いで、故人の作品を数多く手がけた栗山民也が演出し、出演が予定されていた藤原竜也がそのまま主演をする、いわば未完の遺作を世に出した形を取っているが、やはりセリフの文体などで、井上作品の匂いよりも蓬莱作品の味わいがしっかり出ている上演といえる。舞台の真ん中には巨大なガジュマルの木が据えられて、その上に立て籠もる地元の新兵(藤原)と本土から来た上官(山西惇)のやりとりが女(片平なぎさ)のナレーションを交えて展開する。本土の上官が命をかけて島を守りに来てくれたと信じていた現地の新兵に対して、上官はそのあまりにも純な気持ちに閉口し、自分が守りたいのはちっぽけな島ではなく国なんだと切り捨てながら、ふたりしてどんどん巨大化してゆく米軍の基地をただ木の上からじっと見ているしかない。上官に対して「もう、ぐちゃぐちゃなんです。守られるものに怯え、怯えながらすがり、すがりながら憎み、憎みながら信じるしかありません」と告白する新兵と、「この島は終戦の時間稼ぎに意味の無い戦場にされて犠牲に捧げられるのを俺たちは知ってたんだ」と告白する上官の姿に、沖縄と日本の関係がストレートなアナロジーとして表現され、全体にやや観念的に書かれ過ぎてはいるものの、この問題を真正面から扱った力作であるのは間違いないし出演者も熱演だ。ことに藤原竜也のセリフはなかなか聞かせる。


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