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2012年10月18日

あら輝

大阪府大教授の河合真澄さんと銀座の「あら輝」で食事。
「あら輝」は銀座移転以降、何度チャレンジしても予約が出来ず、そのうちミシュランの3つ星まで獲得して日本で一番予約が取りにくい鮨店とまで言われる始末だから、これは当分ムリだろうと判断していたものの、今回は河合さんの強い要望もあったので、こちらの名前を出して、ようやくなんとか予約が取れたのだった。こんなことなら早く名乗ればよかったのかもしれないが、あまりごムリなことはさせたくないのもあって、これまでは大人しく引き下がっていたのだけれど、今度は日本から英国に移転するらしいとの噂を聞いて、どうしても御店主荒木さんに会って直に話が聞きたかった。で、やっぱり噂通り、来年の1月イッパイで銀座は閉店し、三月か四月3月には英国へ出立なさるそうで、話を聞けば聞くほど、いかにも荒木さんらしい英断だと感じたものである。まずもって食材の仕入れを一から考え直さなくてはならず、米と酢は日本から取り寄せられても、ナマモノは一切できないので、現地で手に入る魚をなんとかするしかないそうだ。フォアグラやキャビアやトリュフも使うし、日本人にというよりも海外の人に歓んでもらえるお鮨を作るしかないと割り切っているのだとか。それより何より就労ビザを取得するのが大変で、「支度金を三千万用意して、TOEICを千点以上取らなきゃならないんですよ」との話にビックリ!英国は移民問題が顕在化する中で外国人労働者の流入を抑制する政策を採っており、鮨職人という国内労働者とバッティングしそうもない業種であっても厳しい条件が課されるらしい。英国の経営者に雇用される形を取ればイッパツでビザは下りるものの、そういう形で縛られることに抵抗を感じる荒木さんは敢然とその条件にトライし、「こないだも英国大使館に乗り込んで、あんまりわからずやだからぶち切れて、思わず英語で抗議したんですよ。この僕がですよ」と、かなり流暢な英語を話されるのでそのホンキ度が窺えた。すでにお嬢さんは先に向こうで留学をなさっているとかで、一家を挙げての移住を目前に控えた店内は当然ながら常連客のみで満員状態である。
今日も「川上」と同じ水口さんから仕入れた明石の鯛を皮切りに、大間の優等生的な鮪の赤身、中トロ、大トロ、たっぷり脂がのった鯵の炙りや、口の中でとろけるほど柔らかいスミイカや、塩を打ってきりっと戻した小鰭、この店ならではの深い味わいがあるヅケ、秋のハイライトともいうべきトロの炙りに蒸し松茸をトッピングしたもの等々いずれも久々に美味しく戴きました∈^0^∋もちろん世田谷の頃よりはお値段もアップしているとはいえ、銀座の店としてはとてもリーズナブルで、歌舞伎座の再開場を待たずに消えてしまうのは本当に惜しまれてならない。ただ荒木さんは「鮨を通じて世界の人と交われるのが本当に有り難いと思うんですよ。これからの時代を考えたら、やっぱり積極的に世界へ出て行かないといけない気がしまして。今後はどんな国のどんな肌の色をした人にでも、教えてくれといわれたら、僕の技術を伝えるつもりです」とあくまで前向きだし、本当にこれからますます高齢化に向かう沈没寸前の日本社会を相手にしていたのでは、いい商売だって成り立たないし、いい技術だって伝わらないはずで、私が荒木さんの年齢で荒木さんと同じような立場にあれば、やはり世界に出て行くことを考えるだろうと思われたのだった。なので諸手を挙げて英国移転に賛同しつつ、来年の1月に最後の予約を入れて店を後にしたのでした。



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