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2011年11月24日
ドライカレー
世田谷文学館内の喫茶室で食事。写真は同館の池にいる立派な鯉たち。今日は午後から同館で「花の会」の講演があって、終了後にメンバーの方々といつもはお茶するだけなのだけれど、今日はそのあと日生劇場の二期会公演に向かうので、お食事もさせてもらった次第。年に一度は必ずお目にかかる皆さんで、今年は震災もあったから、ご無事なお姿を拝見してほっとする。近況を話すようにとのことだったので、新連載のバックステージミステリー「壺中の回廊」の背景となる昭和5年の世相について何かと語らせて戴いた。同年に一大センセーションを巻き起こした、モデル小説「真理の春」の作者細田民樹という作家をご存じですか?と訊いて、ちゃんとご存じの方もいらっしゃるのがこの会の恐ろしいところである。古典芸能といわず、文学といわず、皆さん何に関しても本当によくご存じで、そういう方々からすると最近のNHKの古典芸能番組はありゃ一体なんですか!!!ということになるようで、「あんな風にしたって若い人が見るとはとても思えないし、却って今までの古典ファンの視聴者を逃すだけじゃないんでしょうか」というご意見でした。久々にお会いすると、こうした辛口のコメントと頂戴できるのがこの会のいいところであります。
久々といえば二期会も本当に久々で、10年ほど前に栗山民也演出の「夕鶴」を見て以来だし、それ以前はさらに20年以上前だったりもして、ときどき海外オペラは見ても、日本人のオペラはほとんど見てこなかったのだけれど、今回はなぜかプログラム原稿の依頼を受けて執筆したためにご招待を戴いたのだった。で、久々に拝見すると、フィギュアスケートと同じで日本人には向かないのではないかと思っていたものが,
どうしてどうして、いつの間にかヘタな歌舞伎よりずっと面白いエンターテインメントに成熟してるじゃありませんか、というのが正直な感想である。全員とはいわないまでも、歌唱力表現力共に海外オペラにそんなに引けを取らない歌手も存在するし、とにかく3時間に及ぶ「ドン・ジョヴァンニ」を少しも飽きずに聴かせてもらったし、カロリーネ・グルーバーのいささか過剰ともいえる演出もそれなりに面白く見せてもらえたのである。グルーバーの演出は序曲の段階で幕を開け、屋敷の中に召使いのレポレッロがいて、現代人のカップルを迎え入れ、そのカップルがジョヴァンニの騎士長殺しを目撃させられ、そのままずっと居続けるので、どうなることかと思いきや、彼らは劇中のツェルリーナとマゼットだったという設定にはちょっと驚かされた。屋敷は額縁の中に存在し、その向こうにまた額縁が、さらにまたその向こうに、という入れ小細工風の装置で、それらに扉がいくつもあって、そこからジョヴァンニの犠牲になったとおぼしき人びとの亡霊が全身白づくめのフィギュア風にぞろぞろ登場し、ジョヴァンニの行動が常に他者の視線にさらされているという設定は、解釈としては面白いものの、舞台がごちゃごちゃし過ぎて見づらいし集中力を欠くきらいもある。ラストに登場する騎士長の亡霊は司祭の姿だったりと、グルーバーの演出は全体に解釈過剰ぎみといわざるを得ず、ジョヴァンニは女性の潜在的な願望を象徴する存在として登場しているだけに、幕切れの彼の佇まいは実に重要で、ジョヴァンニ役の宮本益光はよくその任に応えた好演といえる。エルヴィーラ役の小林由佳にしろ、アンナ役の文屋小百合にしろ、きれいに歌さえ歌っていればいいというようなわけにはいかない今回の演出になんとか応えているあたり、日本人の歌手も昔とは違ってだんだんと海外オペラ並の演技力を要求されていることが窺えた。
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コメント (2)
きれいな鯉らですね。誰かエサをやったのか、手を叩いたのか。
オペラも少し野球の世界と一緒ですね、日本人も海外レベルになっているのは。
とすると、歌舞伎は相撲と一緒で、そのうち青い目(白人と限りませんね、その場合だったら目の色は様々か)のスターが活躍する日が来るかも・・・
日本人の限界を越える声が通る外人パワーでもって、容姿もちょい大柄、鼻筋通るお兄ちゃんが出るかも?
時々日本人以上に日本文化に興味がある外人がいますが、古い習慣に打ち勝つ根性がある外人なら可能か?
求人広告でないですけど、ええ声がキチッと通る容姿端麗な歌舞伎役者求む(国籍問わず)です(笑)
投稿者 毎晩晩酌 : 2011年11月25日 15:02
新年度の古典芸能番組、本当にひどくて、呆れます。<一体、誰が見るんだ、こんな番組!>前半に登場するタレントや場面設定を凝ったつもりでも、肝腎の古典芸能はごく短くて、まるで予告編。 後半も中途半端で、クイズを入れたり、細切れでバラエティー番組もどきで、お粗末です。<教育TV>が堅いから<Eテレ>とした名称変更も軽薄で、若者や興味のなかった人達を取り込もうという意図は的外れで、虻蜂取らずでしょう。NHKでしか放映出来ない貴重な映像がドッサリあるのに腹立たしく、猛省を促したいです。
さて、昭和初期のバックステージもの、いよいよ連載が始まるのですね。新年号、待ち遠しいです。
投稿者 ウサコの母 : 2011年11月26日 21:33