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2011年11月07日
おろし蕎麦定食
新国立劇場で泉鏡花作・白井晃演出「天守物語」を観る前にオペラシティ内の「そじ坊」で食事。
この作品は玉三郎の初演を観て以来、彼でしか観ていないので、白井晃がどんな風に料理するのか興味を持った。確かに歌舞伎のそれとは違って、脇の役者も皆セリフを粒立たせて聞かせてくれるので、鏡花のアンチ・ヒューマニズムともいえそうなポリシーが窺えるこの戯曲自体が持つ現代性は伝わってくるのだけれど、芝居自体にはさほどの新味が感じられず、むしろ旧い商業演劇みたいな感じを受けたのはBGM
の使い方が煩わしいせいだろう。前半はBGMがないと妙に間が空いた感じになるのも確かだし、その点歌舞伎だと前半は皆が何を言ってるのかよくわからないままなんとなくザワザワした感じに流してしまうやり方で、それでいて決して間が空いた感じにならないのは、ある意味でスゴイのかもしれないと思ってしまった。主人公の富姫(篠井英介)が初めて登場するシーンで舞台奥のセリを使って天から降りる風に見せるのはなかなかいい演出だが、富姫が笠を取って顔を現すところでは、正直いって若い時の篠井さんで観たかったという気がした。もっとも鏡花のセリフをちゃんと聞かせる演技術においては、「花組芝居」の頃よりもちろん今のほうが優っているのはいうまでもあるまい。
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