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2011年11月01日
もんじゃ焼き他
浅草で平成中村座の11月興行を見た帰りに伝統文化放送から松竹演劇部に移籍した前川さんと食事。
勘三郎の東京での復帰初舞台とあって、前川さんからお誘いを受けて初日に駆けつけた次第。正直いってまだパワー全開とは言い難いが、それでもなんとか無事に舞台がつとめられるようになったのは何よりだろう。夜の部の出し物は仁左衛門と共演の「沼津」で、客席の通路を通って観客に挨拶ができる点では復帰にふさわしい舞台ともいえるし、仁左衛門と共演するなら確かにコレが真っ先に浮かぶけれど、病み上がりの舞台だけに、歌舞伎役者なら無理にでも若々しくて元気そうな役作りをして見せてほしかったところだ。とにかく勘三郎はある時期から妙に老けづくりに走ってしまったのが歌舞伎役者としての魅力を削いでしまったような気がしてならないし、ましてや今後このまま老け込んでしまわないように願いたいものである。で、肝腎の「沼津」だが、仁左衛門と勘三郎ともに前半からストーリーが非常にわかりやすくなるような丁寧な演技を見せて、一種の心理劇的な趣きすら感じさせるのであるが、反面どうも底が割れやすいきらいがあって、後半になると仁左衛門型にありがちないわゆる「うるさい芝居が多くて腹が薄い」欠点が露呈し、芝居のテンションがクライマックスまで保たなくなるのである。呉服屋十兵衞はやはりもう少し抑制的にクールに演じて最後の最後で感情を爆発させるという風にしたほうがこの芝居の感動のツボを押さえられるはずで、もちろん義太夫がしっかり肚に入っている仁左衛門にして、時にこうした泣きすぎの芝居になるのだから、義太夫狂言は今後いかに上演が難しくなるかということを思わざるを得ないのだった。
一方で今回なかなか面白かったのは勘太郎と七之助の兄弟コンビ演じる「弁天小僧」で、ことに七之助の
弁天小僧は風情からして、幕末の不良少年は実際こんな感じだっただろうなあというリアリティーが頗るあってハマリ役といえる。勘太郎扮する南郷力丸とのイキもピタリと合って、ふたりのかけ合いが見どころともなり、エネルギッシュな若さ溢れる舞台が実に爽快だったし、橋之助の日本駄右衛門がまた柄が良くてふたりの上置きとしての納まり具合も非常にいいのであった。勘太郎は序幕の「猿若」でも溌剌とした踊りを見せて、来年の勘九郎襲名に期待を持たせた。お父さんが少し弱っちゃった分、子供たちは伸び伸びイキイキし始めた観のある中村座である。
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