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2011年10月29日

あゝ、荒野

今夜はさいたま芸術劇場で寺山修司原作・蜷川幸雄演出「あゝ、荒野」の初日で、マツジュンこと「嵐」の松本潤主演とあって朝9時から詰めかけたファンもあったそうだし、駅前ではチケットを買いたい!というプラカードが沢山見られたが、ジャニーズ系ファンのマナーは相変わらずいいので、こちらも安心してきちんと鑑賞できるのは何よりである。
ところでそもそも寺山修司の芝居は天才ならではの理解しづらさがあるので心配されたのだけれど、今回の作品はもともと彼の小説を「夕暮マリー」なる人物が脚本化したもので、この脚本が小説の断片的イメージと寺山さんならではコトバを巧く取り入れた、いい意味でのウエルメイドな仕上がりだったからとてもわかりやすくて面白く見られた。60年代の新宿を舞台にして「もう諦めた者には決して無い何かが俺の内側にある」とする天井知らずの欲望を持つ饒舌な自信家の青年新次と、「もう自分は死んだと思えば自由になれる」と感じて愛も憎しみも自らの内側に決して掴むことの出来ない吃音症の青年健二。若さの両面を表象するこの二人のボクサーの対戦に向かってドラマは収斂し、ラストシーンではその若さの持つエネルギーと美しさが炸裂する。ただし脚本は彼らばかりでなく多くの登場人物ひとりひとりに寺山さんらしい猥雑なまでの俗語と観念的な言語を綴り合わせた詩的モノローグを与えており、これに60年代の香りづけと抒情性たっぷりの蜷川演出が加わることによって、舞台にはまさしく寺山ワールドが展開された。主演のふたり新次役の松本潤と健二役の小出恵介が共にキャラに巧くはまった好演でラストシーンの表情がとてもいいし、演出の見せ方もさすがである。
それにしてもボクシングと競馬はそれ自体がドラマだから、寺山さんは好きだったのだろう。今回はボクシング小説のドラマ化だったが、今度は蜷川さんに寺山さんの競馬小説を映画化してもらえないかなあ、な~んて今や馬好きの私は思っております(^_^ゞ


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