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2010年11月09日
釜揚げうどん
シアターコクーンでムロジェック作・長塚圭史演出「タンゴ」を見た帰りに文春の内山さんと近所で食事。
社会や生活や芸術のあらゆる規範と形式をぶち壊して自由を得た両親の子供アルトウルが、秩序なき混沌に陥った家庭を再建すべく、自らは形式や理念を振りかざして家族を支配しようとする権力者となり、権力の狂気にかられた彼を背後から襲って殺したエーデックという男が今度はまた家族を支配するという大まかなストーリーは恐らくヒトラーやソ連に支配された作者の祖国ポーランドの国情を反映したものだろう。長塚演出はそれを日本における全共闘世代の子供たちの寓話に置き換えてコミカル且つブラックなドラマとして展開する。テキストとなる戯曲は60年代の海外作品とはいえ、長塚の意図するところもわからないではないし、ドラマ自体も世代間の葛藤や突発的に出現する脅威の権力、若い男性と女性の意識のすれ違いなど普遍的なテーマを備えてはいるのだけれど、そこが観客にはイマイチ十分届いていない憾みがあっったような気がして、森山未來を中心とした配役陣には恵まれながらいささか食い足りない上演だったように思う。
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