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2010年10月14日

じゃじゃ馬馴らし

14日は昼の部と夜の部があって、というのは芝居でなく私のことで、昼の部は日テレ「QP3分クッキング」の秋山編集長と志村さん、イラストレターの川口澄子さんが拙宅をお訪ねになって、「3人で来たのに、まさかもう書かないとは仰言らないでしょうね」てなことで(笑)、来年度の執筆テーマに関する打ち合わせをし、折角お越しになったので、そのあと皆さんを氷川神社にご案内した。「大宮まで来るには、車内で食べるお弁当が要るかしらなんて思ってたくらいなんですけど、あっという間に着いちゃってビックリしました」と志村さん。川口さんに至っては、メチャ便利なので神楽坂からこちらに引っ越してきたいと仰言るくらい、大宮が気に入られようでよかったです(^_^)/夜の部は私にとってメチャ便利になったさいたま芸術劇場で、蜷川演出のシェイクスピア劇『じゃじゃ馬馴らし』を観劇。先日プログラム用のインタビューを受けた際に、稽古場の様子をお聞きして、もともと期待度は高かったのだけれど、その期待を全く裏切らないメチャ面白い舞台でした。
シェイクスピア原作は駄作に近い戯曲だし、ことに現代では唖然とするほど女性差別的なストーリーであるだけに、いくらオールメール(役者全員男性)シリーズといえど料理の仕方は難しかろうとみていたのだが、今回の上演は本邦初いや世界初の成功例といってもいいくらいの出来映えで、その勝因は何よりも主演のキャスティングにあるといえるだろう。市川亀治郎と筧利夫という演技システムの全く異なる芸達者同士が互いのワザを競うようにして舞台全体をハイテンションにすることで、非現実的なシチュエーションやストーリーが妙なリアリティーを持ってくるのだ。
若手歌舞伎役者として抜群のテクニシャンである亀治郎は随所でその特殊な演技術を駆使してのっけから観客の笑いを誘う中で、片や筧利夫は顔が異様にでかく見えるのもあって、登場した瞬間に、「こいつは絶対ヘンジンだ~!!!」と感じさせ、小劇場張りの棒読み型速射砲トークで亀治郎を攻め続けるシーンでこの舞台の成否は決定したといってもよい。そうか、この男女は共に変人同士だったから互いにひと目で惹かれ合ったのか~と観客は妙に納得させられてしまうのである(笑)。
男にすっかり調教されてしまったかに見えるじゃじゃ馬娘の亀治郎が、ラストで男女の在り方をスピーチするシーンでは、ふつうに聞けば鼻白むようなセリフを歌舞伎の女形らしい言い回しで抵抗感なく聞かせてくれるし、さらには剣を小道具として巧みに用いることでこの女性のしたたかさを十二分に表現し、本当は彼女のほうが夫を尻に敷きながら人前で殊勝に振る舞えるくらいにオトナとして成長していることをそれとなく暗示する。一方でその間の筧利夫は舞台で己れの存在を全く消してみせるという、これも歌舞伎的ならではの演出技法を敢えて用いた点が素晴らしい。そもそもこの戯曲は冒頭で、この男女のストーリーが劇中劇であることを明示するから、歌舞伎的な演出にも合理的な説明がつくのだ。他のシーンでも劇中劇を匂わせる演技が随所に盛り込まれ、役者たちが楽しげにお芝居してる雰囲気を舞台全体に醸し出せた点が功を奏し、オールメールシリーズ常連の月川悠貴ほか主演以外の役者たちも伸び伸びと演技して魅力的に見え、観客もノリノリで楽しめるから、ふだん劇場にあまり足を運ばない人にもオススメできそうな舞台であった。
初日はさすがに関係者大賑わいで、翻訳家の松岡さんをはじめロビーで色んな方にお会いして、帰りは画家のミヤケマイさん、講談社のキタモトさん、文春の内山さん、ククルの矢内さんと一緒に劇場前の焼肉店で歓談に耽りました(^_^)


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