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2010年08月04日
なべ家
「小説新潮」で江戸時代の料理を再現してグラビアページに連載する新企画があって、皮切りに今日のお昼は大塚の料亭「なべ家」で会食後に座談会。「なべ家」のご主人福田浩氏は江戸料理の研究家としても知られており、その福田氏が江戸中期の幕臣に日記をもとに再現された料理を、千葉大学の松下幸子名誉教授と共に試食させてもらった。お膳の真ん中に見えるのは沢庵で、上段の写真の左上は鯛の半ペイ汁、右上は煮きり酒で和えた鯛の膾、右下が鯛のつみれと岩茸の汁といった鯛づくしである。下段の写真の左上はイサキの塩焼き、右上はキスの味噌仕立て、右下は人参の白和えで、いずれも見てくればかりに凝った今どきの日本料理とは一線を画した、本当の意味で実に手の込んだとても贅沢な料理であった。たとえばキスの味噌仕立ては、写真だけを見れば、味噌仕立てでなく、すまし汁ではないかと思われるだろうが、調味料の限られた当時は味噌汁ばかりだと飽きるので、味噌汁をいわばドリップしてすまし汁にするという調理法があったのだそうで、すまし汁に見えても飲めばかすかに味噌の香りとほのかな酸味が感じられ、表面を軽く焼いた淡泊なキスの味と巧くマッチ。写真に撮った料理のあとに花エビのすまし汁が出てきて、それと飲み比べてみると違いは歴然で、椀物が重なっても飽きがこない献立になっている。日記ではスバシリ(ボラの子)の焼き物だったのが季節的に入手できず、代わってイサキが登場するも、この焼き物の塩のきかせ方が素晴らしく、ふつうに食べるイサキとはまるで別物の味わいだし、食材としては何てことのない人参の白和えなんかもあとを引く美味しさでした。
美味しいものをたっぷり頂戴したあとは福田氏を交えて3人で話もはずみ、はずみ過ぎて、あとで記事にまとめられる小林姐さんはさぞかし大変だろうけれど、松下先生と私は共に「こんなにイイお仕事ってちょっとほかにないですよね~」なんて言い合いながら、文字通りのオイシイ仕事に大満足でした(^_^)/
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