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2010年07月05日

天とじ丼と冷やし讃岐うどんのセット

 シアターコクーンでクリストファーマーロウ作・蜷川幸雄演出「ファウストの悲劇」を観る前に三茶の「杉の子」で食事。このセットはお得で美味しいので、引っ越し前にどうしても食べておきたかった。で、この期に及んでまだ芝居を観ている私である。
近年メトロポリタン歌劇場で、ベルリオーズ作曲「ファウストの劫罰」が、鬼才ルパージュによってスペクタキュラスに演出されており(私はライブビューイング即ち映像で観た)、ひょっとして蜷川さんはそれに刺激されたんだろうか?と思うほど、今の日本でこの作品が上演されることにはやや唐突の感があるのだった。
そもそもキリスト教文化圏でない国において、悪魔に魂を売った男の話自体がどこまで理解されるかという問題があるからして、まともに取り組んでは勝ち目がないとみたのか、歌舞伎の一座が演じている劇中劇という見立てにして、ミラーパネルの背後に芝居小屋の楽屋風景を配し、下座音楽とバロック音楽を同時に聞かせたり、シルク・ド・ソレイユばりの宙乗りをふんだんに見せながら16世紀の英国演劇の猥雑な雰囲気を醸し出すといった、久々に鬼面人を驚かすノリの蜷川演出を楽しませてもらったのだけれど、それでもやっぱり戯曲自体についていけない感じは拭えなかった。作者マーロウがホモセクシュアルであったという説に基づいてか、ファウストと悪魔メフィストフェレスの関係をそれっぽくする演出も見られたし、絶世の美女ヘレナをニューハーフ?に演じさせたりもしたが、野村萬斎という人は、舞台姿がきれいだしナルシスト風でもあるから、その手の人たちに好かれる要素は多々ありながら、本質的にソドミーは全く感じさせない人なので、所詮は少女マンガ程度のそれとしか見えてこない憾みがある。セリフも朗唱には長けているものの、本当の意味で腹にしみ通ったセリフを聞かせられるほどの技術はないのでラストの長ゼリフがやや冗長に感じられた。タイトルに「悲劇」を謳っても全体には喜劇的に運ばれていて、諧謔味のある演出を楽しむべしといったところだろうか。
それにしても3色の定式幕(じょうしきまく)を使ったり、やたらと下座音楽を流すなどして歌舞伎の要素をたっぷり盛り込んだ演出だけに、せっかくなら悪魔の王ルシファーは顔のデカイ男優に演じてもらって公家荒れ(くげあれ)の隈取なんかしてほしかったな~と思われたのでした。


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