トップページ > 手打ちパスタトマトソース、ラタトイウユ、キッシュ

2010年06月05日

手打ちパスタトマトソース、ラタトイウユ、キッシュ

今日は朝から引っ越し業者の営業さんが来て見積もりと打ち合わせをし、午後はサンデー毎日の取材を受け、夕方はTVで菅首相誕生のニュースを見て、夜は吉祥寺シアターで「ドレッサー」を見たあと近所で翻訳家の松岡和子さんと食事。
「ドレッサー」は英国の旅回り一座の座長とそのドレッサー(付き人)を主軸にしたShow must go on式の典型的なバックステージ物で、大昔に出口典雄演出/三津田健・平幹二朗主演の本邦初演を見たときはあまり感心しなかったせいかほとんど舞台の記憶がなく、今回は松岡さんのお誘いで久しぶりにというより初見に近いカタチで改めて見ると非常に面白く、ちょっと失礼な言い方だが思わぬ拾い物をしたという印象だ。主演はコンド赤信号の小宮孝泰と近ごろTVの刑事役などで売れてる渡辺哲で、ふたりは共に「テアトル・エコー」と「シェイクスピア・カンパニー」という舞台出身の経歴があることを知ってはいても、もしお誘いがなければパスしただろうと思う。ところがやはり芝居は見てみるもんで、ふたりの意外な好演もさることながら
、大谷亮介の演出とプロデュース全体が非常に巧くいって、長尺の芝居を飽きさせない。ふたり以外は座長の妻役を演じた久世星佳を除いて正直知らない俳優ばかりだったのだけれど、それぞれ実にいい味で
この作品の群像劇としての側面を盛り上げている。尊大で自己チューのかたまりで女好きの座長と卑屈で
自信が無く座長との関係でしか自らの存在が成り立たないゲイの付き人。妻であり、且つ一座の主演女優でもあり、かつてはもっと女優として陽の当たる場所にいた女と、座長への愛を隠しつつずっと裏方を務めている女。台本を書く才能も認めてもらいたい野心家の若い男優と、長らく端役しかできずにいながらアクシデントで人生初の大役に舞いあがる老優。といった具合に、対照的な3組の登場人物がくっきりと立ちあがって見えたのは、それぞれ特徴のある声質を備えた俳優人をそろえた、まさしくプロデュースの勝利といっていいかもしれない。劇中劇の「リア王」がいかにもそれらしい発声でマジに演じられる一方で役者達が拙い楽器演奏でBGMや効果音を担当する舞台裏のドタバタを見せるシーンは大いに笑えて,本公演の白眉ともいえそうだ。戦時の最悪の状況下で「リア王」を演じる座長の最期の一日を描いた悲劇でもありながら、全体として喜劇的トーンで演じられるのがこの戯曲の解釈としては正しいのだろうと思う。


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kesako.jp/cgi-bin/mt/mt-tb_kesako2.cgi/1563

コメントしてください




ログイン情報を記憶しますか?


確認ボタンをクリックして、コメントの内容をご確認の上、投稿をお願いします。


【迷惑コメントについて】
・他サイトへ誘導するためのリンク、存在しないメールアドレス、 フリーメールアドレス、不適切なURL、不適切な言葉が記述されていると コメントが表示されず自動削除される可能性があります。