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2010年05月06日
辛味大根そば定食
新国立劇場で井上ひさし作「夢の泪」を見る前に近所で食事。
東京裁判3部作の中でこれだけ初演を見損なっていて、風邪引きサンなのに出かけてしまいました(^_^ヾ
この3部作はいずれも膨大な資料が未消化に終わった憾みがないとはいえず、戯曲としての完成度が高い作品群とはいい難いのだけれど、それでも現代の日本を考える際、ことに米国とのある意味で歪な関係は、東京裁判に立ち帰って検証する必要があるという確固たるテーゼに貫かれている点において、さすがに故人の面目躍如といった趣の力作であることは間違いない。たとえばこの作品では、裁かれた人びとの弁護費用は一体どこが払ったのかというような看過しがちの問題が明らかにされることで、裁判自体の異常さが浮かびあがってくる仕掛けである。国際連盟脱退と三国同盟の締結で知られた松岡洋右の弁護を引き受けた弁護士夫婦が主人公だが、作中では松岡に対する歴史的評価にはあまり触れられず、ただし日本が昭和3年のパリ不戦条約違反を次々に冒したことは裁かれるに値する点としてきっちり指摘されている。敗戦直前の8月7日に日本は公文書の多くを焼却し、焼却し損なった70万点に及ぶ文書が米国に持ち去られた結果、戦争責任を明確にできなかったという問題や、日米の合意で曖昧にされた在日朝鮮人問題等々、今日に至るまで延々と続く日米間に横たわる深い闇に斬り込んではいるものの、少し盛りだくさん過ぎて全部が伝わりにくいのは惜しまれる。
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