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2010年04月11日
井上ひさし氏死去
けさネットのニュースで初めて知ってショックを受けた。先月見たこまつ座公演「シャンハイムーン」の初日乾杯でお身内からお話があって、病状が芳しくないらしいという印象を受けたので心配していたが、まさかこんなに早く逝かれるとは思ってもみなかった。故人のお名前を最初に知ったのはもちろんNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」で、その後、大学時代の友人が「表裏源内蛙合戦」や「日本人のへそ」などに感銘を受けて、それを上演したテアトルエコーの演出助手になったので、彼女に誘われて「それからのブンとふん」を見たのが舞台初見である。以後ほぼ欠かさずその舞台を見るようにして、ファンを自認していたから、「ぴあ」の嘱託で演劇記者をしていたときに、新作「パズル」の取材を申し込んだのである。取材時点でまだほとんどできていない状態だったので、演出家からお話を聞いてなんとかむりやり記事にまとめたところ、「パズル」はついに完成に至らず上演中止!!!の事態となり、取り消しが印刷の進行に間に合わず,誤情報が「ぴあ」の紙面を飾るはめになった。当時の演劇界では前代未聞の大事件で、劇作家としての生命が絶たれるほどの不祥事だったにもかかわらず、その後も故人が何回かそういうことを繰り返されながら演劇界の重鎮として君臨されたのは、いかに代え難い人材だったかを物語る証拠だろうと思う。とにかく私にとっては「ぴあ」に誤情報を書かされた相手として忘れがたい人物となったのだけれど、まさか自分が小説を書いて、その小説の審査をなさる相手になろうとは夢にも思わなかったのである。
初めてお目にかかったのは私が直木賞を受賞したあとで、それ以前も劇場のロビーでよくお姿を見かけたが、なにしろ審査をなさる方なのでご挨拶は遠慮した。受賞パーティにもお出ましがなかったのでお会いできず、一昨年「道元の冒険」が上演されたシアターコクーンの初日のロビーで、向こうがちらちとこちらを見てらっしゃったので、思いきってそばに行ってご挨拶をしたのが初対面だった。その場にいらした松岡和子さんも文春の編集者も、故人と私がそのとき初めて面と向かって言葉を交わしたという事実には意外の面もちで、私自身なんだか物凄い遠回りをしてお会いしたような気分だった。
今となってはもう笑いにできる「パズル」の上演中止と「ぴあ」誤情報の一件を、お会いしたときは必ずしようと思いながら、初対面ではさすがにできず、こんどお会いしたときにと思って取っておいたのに、以後はこちらが初日に行けなかったりもして、ロビーで目にかかれず、とうとうそのお話をする機会を喪ってしまったのは悔しくてならない。作品に対する思い入れは山ほどあって、ここには書ききれないので、故人とのかすかな接点を書いて、ご冥福を心よりお祈り申しあげる次第だ。
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コメント (2)
驚きました。病名は報道で存じてましたが、つい3日前?にこまつ座の脚本が遅れているが、それは本人が病気の治療に専念されている為、と言う様な記事を読んでいたので、まさかそれほどの状態になっておられるとは思っていませんでした。お嬢様が「最後は家で看取るという願いがかなってよかった」というようなコメントでしたが。合掌
投稿者 お : 2010年04月11日 22:26
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