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2010年02月23日
天丼とキツネうどんのセット
シアターコクーンで「上海バンスキング」を見る前に近所で食事。31年前の初演以来の観劇だから、いささか怖いもの見たさという気分もないではなかったが、「ウエルカーム、シャンハ~イ、ウエルカームシャンハ~イ」とテーマ曲が流れただけでウルウルしそうなオールドファンの熱気と、往年の舞台を今日にしっかりと蘇らせたキャスト陣の奮闘ぶりに結果としては心地よく圧倒された感じだ。この女優でなければ成り立たないマドンナ役の吉田日出子は、最初は太り気味で姿勢も悪く、動作もやや鈍くなったように感じられたのだけれど、それがだんだんとキレイに見えてくるから、いい女優はまさしく化け物である。例の可愛らしいカマトト声も健在だし、劇中で数々のナンバーを歌いこなしたあげく、アンコールをしてさらにロビーで余興に2曲も歌ったのには恐れ入った。笹野高史にしろ小日向文世にしろ、初演の時点ではまだ世間一般には無名に近い地味な存在だったのが嘘のような昨今の売れっ子ぶりの中で、トランペットやサックスの演奏をしっかり稽古して舞台に臨んでいるのは実にあっぱれだし、初演時から芸達者だった笹野は例外としても、小日向や大森博史や真那古敬二といった昔は相当のダイコンだった面々が時を経て当然ながら演技がそこそこ巧くなっていることも感無量というべきかもしれない。演出兼の主役の串田和美は相変わらず演技者としての成長はあまり見られない上に、声も出なくなっているのは厳しいが、この作品に関するかぎりにおいては、ご愛敬としておこう。比較的ウエルメイドの戯曲で且つ男優全員が舞台で楽器の本格的な生演奏を披露するという点が当時大いに評価されたこの作品が30年の時を経てもなおかつ生命力を有しているのは驚きで、いみじくも高齢化した現代の日本にぴたりとはまる一大エンターテイメイントであった。それにしても連日「シャンハイ」物の芝居を見てしまったわけで、これもひょっとして上海万博が影響してるんだろうか?なんて考えてしまうきらいだけれど、これからの日本にとっては若い人も中国との過去の関係をしっかり学んでおくことに越したことがないのは確かであります。
終演後のロビーで歌と演奏が披露されたが、肖像権を考慮して、俳優たちは敢えて撮りませんでした。
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