トップページ > おこわ弁当、魚介と野菜のサラダ

2009年10月21日

おこわ弁当、魚介と野菜のサラダ

整体治療の帰りに東横のれん街でゲット。
33年前に岩波ホールで上演された武智鉄二演出/中村扇雀(現坂田藤十郎)・白石加代子共演の「東海道四谷怪談」を私は学生時代に見ているのだけれど、羽田澄子監督の手でそれが映画化されていたことは露ほども知らずにいて、今日その上映会が恵比寿の写真美術館であるのを松岡和子さんから報された時はビックリしたのだった。松岡さんは白石さんと顔が似ているということもあって(確かに!)以前からとてもお親しいのだそうで、白石さんからその話を聞いて私に報せてくださった。で、私はそれを早速そのムカシ武智師の秘書で、現在は伝統文化放送歌舞伎チャンネルのディレクターをしている前川さんに報せて、一緒に見たのである。これがさまざまな悪条件下で撮られたものとは思えないほど素晴らしいフィルムで、正直言って、ナマの舞台を見たときよりもはるかに強烈なインパクトを受けた。
武智歌舞伎の映像は日生劇場の「勧進帳」があるらしいことを前にブログで書いたが、残念ながらそれは全く目にしておらず、所在も定かでないので、羽田監督がよくぞ撮っておいてくださったものだと思う。上演当時は確か武智師が参議院に立候補された事情もからんでいたり、岩波ホールという空間の問題等もあって、決して評判がよくなかった作品なのだけれど、今見ると、近ごろの実験的な歌舞伎とはあきらかに一線を画する水準の高さであり、非常にリアルで且つ歌舞伎のエロキューションをきちんと踏まえた、武智師のコトバでいう「息の詰んだ」舞台であったのがよくわかる。伊右衛門を演じた扇雀当時の藤十郎はナマの舞台でも鮮烈な印象を受けたことをよく憶えていて、非情酷薄な色悪をここまでリアルに演じきる役者はまずいないと改めて感心させられたし、お岩の亡霊に操られてわが手で自らを斬り苛んで首を刎ねて最期を遂げるという武智師らしい残酷なラストシーンは映像化によってより活きた感じがした。またナマの舞台だと男優と女優の寸法の違いが響いて、どうしても白石さんの分が悪くなる印象が否めなかったが、映像だとその点が巧く解消されて、30代で歌舞伎役者に堂々と渡り合えるだけの発声や身体を備えていた名女優だったということにこれも改めて感心せざるを得なかった。とにかくこの映像が残っていたのは故武智師にとっても藤十郎丈や白石さんんとっても非常に有り難いことではなかろうか。「私は全くの門外漢だけど、この1本を見ただけでも武智さんのすごさがわかる」と松岡さんに言わしめながら上映の機会には恵まれにくいと思われるだけに、私は前川さんに是非とも歌舞伎チャンネルで放送してほしいと訴えたのだった。
会場には関係者が大勢お越しになっていて、松岡さんのご紹介で久々に白石さんにもお目にかかれたし、鴨下信一氏ともお話ができたのは嬉しかった。鴨下氏は東大の美学科で卒論が歌舞伎のひとり二役についての研究だったそうで、とてもお詳しいし、なんといっても面白かったのはドラマ「七人の刑事」で武智師を俳優として起用なさったという話である。もちろん犯人役で(笑)、大屋政子さんと、紀伊国屋書店の田辺茂一氏と合わせて3悪党という実に豪華な配役だったらしいが、その映像は残念ながら残ってなさそうであります。


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kesako.jp/cgi-bin/mt/mt-tb_kesako2.cgi/1331

コメントしてください




ログイン情報を記憶しますか?


確認ボタンをクリックして、コメントの内容をご確認の上、投稿をお願いします。


【迷惑コメントについて】
・他サイトへ誘導するためのリンク、存在しないメールアドレス、 フリーメールアドレス、不適切なURL、不適切な言葉が記述されていると コメントが表示されず自動削除される可能性があります。