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2009年10月20日
幽庵漬け丼
新橋演舞場で中島かずき作いのうえひでのり演出「蛮幽鬼」を見て幕間に食事。演舞場で上演した「いのうえ歌舞伎」はこれで全部見たことになり、個人的には「アテルイ」がベストだと思うが、小劇場から出発しながら今や最も商業演劇らしい芝居を披露してくれる☆新感線の公演だけに、今回も十分楽しませてもらった。ストーリーはデュマの「巌窟王」を下敷きにした復讐劇だが、作者がプログラムで「恨みを晴らして正義が勝つみたいな話を今書く気分にはどうにもならない」といみじくも述べたように、個人の単純な復讐劇には終わらないところがミソだろう。主人公を助けると見せかけて、国を滅ぼすようにし向ける悪魔的な殺人鬼を一方に配することで、報復の連鎖がついには国同士の争いとなって大量殺戮に通じるという現代社会のメタファーが忍ばせてあるのも9.11を通過した物書きの必然的な着地点として理解できる。モンテクリスト伯に当たる役を演じる上川隆也、満面に笑みを湛えて容易に人の命を奪う殺人鬼役の堺雅人、ヒロイン役の稲森いずみ、共に序幕はいささか演技が頼りない感じだが、ラストに近づくにつれテンションがあがって存在感が増した。殺陣はやはり早乙女太一が一番安定感がある。橋本じゅんや高田聖子らお馴染みの達者な面々はもちろん安心してみれいられるが、個人的に今回とてもウケたのは大王役を演じた右近健一だ。
大劇場では初日でなくても誰かに会うが、今日は3人に声をかけられ、ひとりは松竹大谷図書館の飯塚さんで、もうひとりは「渡辺ですが、憶えてらっしゃいますか?乗馬クラブの……」と言われたときは正直ピンと来なかったのだけれど、離れたあとでアッと想いだした。以前クラブのカウンターで受付をなさっていた女性で、転勤か辞められたかしてお顔を見なくなって久しいから忘れていたのである。気がついて捜してみたがもう姿は見えず、失礼してしまってとても残念だった。
もうひとりは知り合いでもなんでもなくて、私がうっかりものを落としたときに「落ちましたよ」と親切に声をかけられただけなのだけれど、顔を見たら自民党の島村宜伸元文部大臣だったのでちょっと意外に思われたのであります。
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