トップページ > ガラパゴス紀行 その6

2007年02月21日

ガラパゴス紀行 その6

 16日も早朝からのクルージングでサウスプラザ島に向かい、またもやアシカの群生する岸壁を通り抜け、見かけが山口県の秋吉台とよく似た大地に足を踏み入れたとたん、海イグアナと陸イグアナがごちゃ混ぜになってそこら中にいるので踏んづけないように注意して足を運ばなくてはならない。小さな島の反対側は断崖絶壁でそこら中にさまざまな水鳥の巣がある。「ルック!クリーニング!」と自然ガイドの男性が叫ぶので、何だろう?と思ってよくよく見たら、フィンチ(ガラパゴスで雀のようによく見かける小鳥。ダーウイン進化論の根拠として有名)が海イグアナを嘴でつついて膚のお掃除をしてやってるところだった。ほかにも水中ダイビングした瞬間のカツオドリとか、いろいろドラマチックなシーンを目撃しながらも、素人カメラマンの哀しさで撮影が全く間に合わない(涙)。前夜にぐっすり眠って完全復活を遂げた望都さんはこの日もまたシュノーケリングに挑戦してすっかりハマった様子である。
 帰りは皆でサンタクルス島の町に出かけて茶店でソフトクリームを食べたり、土産物店でショッピングを楽しんだ。町にはなんとスーパーもあり!観光客よりも地元の人が大勢いて、いずれもなんだかとても気楽そうに暮らしてる感じだ。ガラパゴスの観光客は1人あたり100$の入島税を支払うので、島民は皆それなりに豊かに暮らしていけるのだろう。
 そもそも2日間のクルージングを通じて、コレって何かに似てるなあという気がしつつ、私がアッと想いだしたのはディズニーランドのアトラクションだった。そう、このガラパゴスのクルージングは「ジャングルクルーズ」を百倍もスケールアップして、違いはすべてナマモノであるという点だが、ガイドさんのノリや観光客の楽しみ方や何かはディズニーランドとそうは変わらないのである。「果たしてこんなんでいいんでしょうかねえ」と言いだしたのは一行中最若年の友人で、たしかに私も首を傾げる点が少なくはなかったものの、最終的には「やっぱりこういうやり方しかなかったんじゃないの」との結論に達した。
 そもそも自然を保護する思想は欧米的な考え方であり、それなりに豊かな人間の生活が保障されて初めて成り立つものだ。放っておいたら、この島のリクガメやイグアナや珍鳥の数々はすべて入植者の邪魔者として駆逐され、あるいは剥製にされて先進国で売りさばかれたに違いない。そうさせないためには先進国の観光客にお金を落とさせるよう、この島を巨大なテーマパークに仕立てるほかなかったのである。世界遺産第1号となったこの島のありようは今後のモデルケースとして非常に重要であり、恐らくそこに何らかの問題点が多々あろうけれど、そばに近寄る人間を全く恐れずぼーっとしている動物たちを見る限りにおいては実に巧くいってるようにも思えるのだった。
 もっともディズニーランドとの決定的な違いはアシカやイグアナの死骸を人目につく場所に放置してある点だろう。このブログには載せなかったが、私はそれらのいくつかをカメラに収めている。いうまでもなく同じ島にはそれらの死骸を好餌とする鳥や虫がいる。「生」と「死」は常に隣り合わせにあって、「死」はまたかならずや他の「生」に役立つことを目の当たりにできるのがこの超自然派テーマパーク最大のウリといってもいいのではないか。
 写真上段は『イグアナの娘』の作者とイグアナのツーショット(笑)。中段は美味しそうにサボテンを食べてる陸イグアナ、下段は断崖絶壁で甲羅干しをしてる海イグアナ。海イグアナは比較的からだの小さい若い群ればかりを見かけたが、これは恐らく前回のエルニーニョで大型のが大量に死んだあとに生き残った連中だろうと思われた。ガイドはそんな説明をしなかったし、去年の暮れに再発したエルニーニョについての心配も洩らさなかった。とにかく海イグアナは全島にまだうじゃうじゃいて当面絶滅する恐れはなさそうである。