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2007年01月24日
朧の森に棲む鬼
集英社の八代さん、栗原さん、講談社の堀さん、神保さんとご一緒に新橋演舞場公演を観劇。編集者の方々をお誘いしながらチケットが平日のマチネしか取れなかったのは申しわけなかったが、超満員の客席は性別年齢共にバラバラで、勤めを休んだサラリーマンやOLとおぼしき方も大勢いて、市川染五郎と劇団新感線がタッグを組んだこの興行の人気が今やいかに高いものであるかを窺わせた。
シェイクスピアの『マクベス』を下敷きにして「頼光四天王の世界」を取り込んだ作品で、森に棲む魔女の予言を得た主人公ライは「人間に正義などない。あるのは欲望だけだ」と確信して舌先三寸と無敵の刀剣を武器に周囲の人間を次々と陥れ屠って王座に就き、予言通りの死を迎える。殺陣をふんだんに盛り込んだ演出は新感幹のオハコとはいえ、全体にアジアンテイストでまとめた雰囲気は昨夜見た『コリオレイナス』とも共通し、ただし同じアジアでも昨夜のは北方系、今日のはあきらかに南方系で、魔女が登場する森には映画『キリング・フィールド』を彷彿とさせる髑髏の山が築かれ、ベトコンを模した戦士なども登場させている。一方で本水(ほんみず)や血しぶきをたっぷり使った生々しい舞台作りが大いに功を奏して客席を沸かせた。
主人公ライに扮した染五郎は初めて新感線と組んだときの公演に比べると役者として格段に頼もしくなっており、歌舞伎の本公演ではイマイチ精彩を欠くこの人が魅力的な「色悪」を演じきった。ヒロインの秋山菜津子は達者な演技だが、やや花に乏しいのは如何ともしがたい。古田新太は欠かせない存在ながら、今回ゲスト参加したかたちの阿部サダヲはオイシイ役で期待通りの活躍を見せた。見ているほうは息つく暇もないあっという間の4時間でした。
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コメント (3)
私も今日コレ観てきました(夜の部ですが)。新感線の芝居は相変わらず土くさいですが、俺は舞台がすきなんじゃ、やりたいんじゃ、という関係者各位の熱みたいなものが伝わってきて、ちょっとキュンとしました。新感線には私の好きな橋本じゅんがいますが、現在「野田家(『ロープ』)」に居候しているためこちらには出演がなく、そこがとっっても残念でした(涙)
投稿者 ふみ : 2007年01月25日 00:22
私は新派が大好きで、新橋演舞場と言えば新派を思います。
12月公演は新派でしたが・・・
江戸時代の歌舞伎も確か良いんですが、ちょっと前の時代もなかなか良いもんですよ。
今、切実に思う事はそんな前の事よりちょっと前の事から振り替えってみませんか・・・
投稿者 ともちん : 2007年01月25日 00:44
>ふみ様へ
>新感線には私の好きな橋本じゅんがいますが、
私は古田のファンで、彼が近所に住んでいてよくすれ違うので喜んでいます(笑)。
>ともりん様へ
>私は新派が大好きで、新橋演舞場と言えば新派を思います。
私も昔は新派が好きでよく見てましたが、松竹に入社した年に先代水谷八重子が亡くなって、そこから急速に人気が落ちていったのを肌で感じておりました。劇団の回復はもう無理でも、鏡花物などはずっと上演されるでしょうし、川口松太郎なども今後以外に人気が復活する可能性はあるように思います。
>今、切実に思う事はそんな前の事よりちょっと前の事から振り替えってみませんか・・・
ちょっと前の時代とはいえませんが、拙著『銀座開化事件帖』のシリーズは明治物です。今年第2巻の単行本と第1巻の文庫本が新潮社から併せて出版される予定ですので、よろしければご高覧下さい。もちろん喧伝です(笑)。
投稿者 今朝子 : 2007年01月25日 09:15
