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2006年12月09日
茄子のピリカラ炒め、ニラ饅頭
シアターコクーンで野田地図の『ロープ』を見た帰りに東急地下紀伊国屋の「新橋亭」でゲット。
先日歌舞伎座でお会いした集英社の伊藤さんが「出演者に頼んでもチケットが取れなかったんですう」と嘆いてらした超プレミアチケットで、今回ばかりは同伴者のチケット購入を断られてしまい、例によってズラーっと立ち見の行列が出来てるのに、招待席のど真ん中がふたつもあいてた。風邪ひいた演劇評論家か何かしらんが、這ってでも出てこいっ!さもなくば制作にちゃんと連絡しろ!と言いたい(笑)。
なにせひとりでも十分に観客が集められる宮沢りえと藤原竜也が野田作品で共演というわけだからチケットが取れないのも当然だし、きっとこのブログの読者の中でこれからご覧になる方もいらっしゃるので多くを語るのは慎むが、チケット入手を諦めた方はあまり残念がらなくてもよさそうだと申しあげておく。
それにしてもプログラムの作者のコトバを読んで、野田秀樹も本当に書くことがわかりやすくなったという気がしたが、そうしたわかりやすさは成熟でもある一方で老化による凡庸を物語るのかもしれず、この作品もまたコンセプトやメッセージが誰にでもわかり過ぎるくらいに出来ていて、評論家は書きやすいからきっと賞めて書く人もいるだろうけれど、小説にしろ戯曲にしろ評論家が書き切れる程度にコンセプト立ちした作品は実のところ失敗作のケースが多いのである。本当に作品に力がある場合は、当初のコンセプトをはみ出して筆が勝手に転がっていき、作者自身が書いていてハッとする瞬間が必ず訪れるものであり、その作者自身のハッとした瞬間が最もドラマチックなシーンなりセリフとなって観客の胸を打つのだろうと思う。作者がメッセージやコンセプトに囚われすぎると自身にハッとする瞬間がどうしても訪れ難くなるために勢いドラマチックな感興は薄くなる。もっともこれは言うは易しであって、今どうしても伝えなくてはならないメッセージがあると作者が思えば脱することはなかなか難しい陥穽で、昨今の国内外の情勢を眺めていれば、野田秀樹が『オイル』だの今回の『ロープ』だのといった作品を発表するのもまた無理からざる姿勢として受け止めざるを得ない。とはいえ今回は現代の劇場型戦争をプロレスのリングに見立てたコンセプトが余りにも凡庸だし、宮沢りえの扮するコロボックルが何を意味するのかも芝居が始まってすぐに私は読めたから、ハッとするところがまるでないままに芝居は幕を閉じた。セリフも最初のほうは筆がうまく転がっている気がしたが、後半に至ると野田秀樹早くも老いたりかといいたいくらいのガス欠状態になる。ただ、りえチャンと竜也の魅力をうまく引き出したキャラ作りは出来ているから最後まである程度は楽しんで見られるのが救いだ。
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コメント (2)
何年か前に野田秀樹さんにお目にかかる機会がありまして、その時に野田さんが「昔は面白いと思ったら何でもやっていました。でも、ある時から何かやる時に、それはこのシーンに本当に必要なんだろうか?って考えるようになってしまったんです。」とおっしゃってました。その時、私は野田秀樹さんは芝居を作る時に使う脳の回路が変わってしまったのかなって思いました。ひらめきだって、脳がきちんと考えているんだと思うんですよ。野田さんが初期に使っていた脳の回路が何かの理由で使えなくなったんで、他の回路で芝居を作ったらなんだか普通になっちゃった、ってことはないでしょうか? 脳のことなんて全くわかってない素人ですから、単なるイメージでそう考えてしまったのですが。
投稿者 バルサミコ : 2006年12月11日 00:21
>その時、私は野田秀樹さんは芝居を作る時に使う脳の回路が変わってしまったのかなって思いました。
それって何年前の、というか、どの作品のころからなんでしょうねえ。私は大昔に『リチャードの三代目』(?だったかどうかもうタイトルもちゃんと想い出せないグローブ座公演で、孟宗竹=妄想だけというダジャレが印象的)で初めて、ああ、彼は今書けなくて苦しんでるなあと感じたことがあって、でもその後また彼の代表作といっていいような面白い作品を続々と書きだしたので、それは一時的スランプだったのでしょう。脳の回路が変わるというのは確かに言い得て妙で、創作の場合は本当に脳の色んな機能を使ってるなあという気が自分でもします。人によって違うでしょうが私はもともと整理するアタマは悪いなりに使い慣れてたので削ったり構成し直したりする作業はゼンゼン苦にならないけれど、実際には何もしていないように感じる着想段階、つまりは一番ひらめきが重要なときは、ごく平凡なストーリーを拵えていても、大変に苦しむんですよね。
投稿者 今朝子 : 2006年12月11日 06:44
