トップページ > シシカバブ、シーザーサラダ、シュリンプ&チップス、ライスコロッケ

2006年11月05日

シシカバブ、シーザーサラダ、シュリンプ&チップス、ライスコロッケ

 新国立劇場で鈴木忠志演出の『イワーノフ』『オイディプス』を見た帰りに岡本螢と近所のパブで食事。
数十年ぶりで見た鈴木忠志だが、文字通り息が詰まるセリフ、バックに流されるミュージックコンクリートや演歌や唱歌等々、いやー、チュウさんはやっぱりチュウさんでした(笑)。これはこれでお見事としかいいようがない。客席は白髪のオールドファンが大方だが、現代人の「引きこもり」を彷彿とさせる『イワーノフ』は結構コンテンポラリーな暗喩として見られなくもないので、今の若い人が何の予備知識もなしにこれを見たら爆笑が巻き起こって、良い意味で評判になるのではないかという気もするくらい。とにかくいわゆるアングラ的演出に関していえば、この方は紛れもなく本家である。よくあるアングラ末裔のチャチな演出とは一線を画して、「前衛」というコトバをひしひしと感じさせる緊迫の舞台であり、したがって私も岡本螢もどっと疲れて(笑)近所のパブに駆け込んだのだった。
 岡本螢とはこの前久しぶりに一緒に飲んで、彼女の戯曲が来年三越劇場等の商業演劇で2、3本上演される話を聞かされたが、今晩もまたそれについて熱心に語り始めて止まらない。私はもともと演劇制作会社のスタッフだったから、最初はふんふんと聞いていたのであるが、「ねえ、ねえ、煮詰まったらまた電話するから相談に乗ってよ」と昔のお願いモードになられると「いっちゃなんだが、私も今は進行中の作品を4本も抱えてて、人の相談にまで乗ってられません(笑)」とお答えするしかない。で、帰宅するとこんどは珍しく女優の中村まり子さんから電話があって、これまた別のご相談で、そのついでにまた彼女が上演する来年の芝居について聞いているうちに午前3時を過ぎてしまい、「ゴメン、明日わたし乗馬に行くもんで」と電話を切ったのだった。
 面白いのは、ふたりともけっして過去の想い出に浸らず、先の話をすることだった。お互い50歳を過ぎた旧友同士でこんなことは珍しいのではないかと思うが、いくつになっても後ろを向かず常に前向きの姿勢でいられるのが芝居人のいいところかもしれない。わが師匠の武智鉄二も最晩年に至るまで過去をほとんど語らず、次の芝居の計画のみを話し続けた。想い出話をするようになったら芝居人はお終いである。
 で、これは芝居人に限らず、妄想系というかフィクション系というかの職業、たとえば映画監督や小説家とかも皆そうなのではないかと思う。私自身も書いたものはそばから忘れてしまい、次々と先の妄想が湧くからこそ小説を書き続けているのであるが、書こうとしている段階で人に話して理解されることはまずない。その段階では相棒の編集者にも多くは語れない。これは何も秘密にしようとしてるわけではなくて(笑)、文字に落として初めて人に理解されるのが小説の妄想というものだからである。てなわけで芝居人と話すと一方的に受け身になるので何だかとてもソンな感じがするのでした(笑)。ともかくもなんだか非常にOLD DAYSな一夜が明けてこれを書いております。


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kesako.jp/cgi-bin/mt/mt-tb_kesako2.cgi/221

コメントしてください




ログイン情報を記憶しますか?


確認ボタンをクリックして、コメントの内容をご確認の上、投稿をお願いします。


【迷惑コメントについて】
・他サイトへ誘導するためのリンク、存在しないメールアドレス、 フリーメールアドレス、不適切なURL、不適切な言葉が記述されていると コメントが表示されず自動削除される可能性があります。