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2006年10月02日

芋汁

 急に肌寒くなった今日この頃にもってこいのQP料理でした。里芋とコンニャクと豚肉を味噌煮込みしてネギを加えるだけ。里芋は粗塩で揉みあげ、さらに下茹でしてあくとぬめりを取るが、ぬめりを取りすぎないようにするのがポイント。コンニャクもむろん下茹でしてあくを取る。豚は脂身もしっかりある肩肉がいい。味噌に酒、砂糖を加えて少し甘めに味付け。味噌は2度に分けて入れ、最後に入れた分で香りを出す。
 実はこのところ胃腸がイマイチ不調で、なんてうっかりいおうものなら、そんなにしっかり食べてんじゃん!と怒られそうだが、せっかくの松茸料理も私は思ったほど食べられなかったのであります。まあ、その前の週がとにかく食べ過ぎだったので調整期間に入っているわけで、それでも同年代のフツーの人と同じくらいの量は食べていたりもするのだろうけれど、食欲が急にバッタリ落ちた原因は1冊の本にあったような気もするのであります。
 イラストレーターの百田まどかさんから「ミセス」副編集長の福光さんを通じて薦められたカズオ・イシグロの小説「わたしを離さないで」(早川書房)は久々に出会った凄い小説でした。案外あっさりネタバレするし、主題そのものはそう斬新でもないのですが、驚くべきは極めて抑制がきいた筆致で人物それぞれの思いが実になまなましく描かれている点です。かくして私小説なみのリアルさで読まされてしまい、そうなるとあまりにも重い主題がズシンと腹に応え、且つ暗喩的に人生の不条理に思いを致すはめとなり、読了した日からしばらく私は眠りが浅くなって、食欲もいっきに落ちたというわけです。
 とはいえ久々にお薦めしたくなった小説でもあるので、興味のある方は体調の良いときにお読みください。今日TVで流れたあるニュースで想いだしてこれを書いていますが、どのニュースかはネタバレにつながるので申しあげられません。すでに読まれた方はご感想をお寄せくだされば幸いです。


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コメント (2)


はじめまして。こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。お料理も参考にして作っています。

「わたしを離さないで」はしみじみとよい本でした。わたしには縁のなかった子供時代の友情などうらやましい部分もありました。

感想は、そうですね、不自由であったり制約があることはそんなに不幸ではないのかもしれない。ということでしょうか。時代劇や時代小説の中での個人の力ではどうしようもない閉塞的な生き方の中にも、花も嵐もあるわけですから。

あえて触れないでその部分の不条理や怖さを浮き上がらせる手法はさすがと思いました。

わたしは50歳をとっくにすぎてありとあらゆるしがらみでがんじがらめですが、それでも解放されたという思いはあります。なんでもできた、全ての可能性があった若いころのほうが精神的に束縛されていたような気がします。(だからといって、自由を否定するわけではありません。)

投稿者 あきこ : 2006年10月05日 12:55

わたしは50歳をとっくにすぎてありとあらゆるしがらみでがんじがらめですが、それでも解放されたという思いはあります。なんでもできた、全ての可能性があった若いころのほうが精神的に束縛されていたような気がします。

>ああ、これは本当に仰言る通りかもしれません。今の若い人にぜひ聞かせたいお言葉です。


投稿者 今朝子 : 2006年10月06日 00:44

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