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2006年09月02日

冷や奴、オクラ納豆

 米朝事務所の大島さんと近所でランチをたっぷり食べたので、今晩はダイエットメニュー。
 このブログでも何度か紹介してるが、大島さんのご父君はいわゆる劇場音楽の草分けとして長谷川一夫や美空ひばりといった往年の大スターと組んで仕事をし、彼女自身は元ヅカジェンヌで、その後歌舞伎役者のマネージャーとなり、現在は落語家のマネージャーという、まさに興行界にどっぷり浸かって泳いできた人だけに、さまざまな情報が聞けて面白い。で、今日は小朝師匠が無類のカラオケ好きだという話から、近ごろはマイクの感度が良すぎて、彼女のように歌のレッスンをきちんとした人よりも、ぼそぼと呟くように歌う人のほうが却ってうまく聞こえるという話になった。
 なるほど、そういわれてみると、昔は映像系の俳優が舞台に立つと下手くそで見てられなかったりしたもんだが、昨今はTVのタレントが意外なほど舞台で通用するのもきっと同じ原理なのだろう。とにかくパソコンも含めて電化製品全体の著しい発達は、さまざまな業界で想像以上の変化をもたらしているものと思われて、つい最近のニュースだと米国タワーレコードの倒産なんてのもこれに入るだろう。
 古典芸能の業界でもまず録音テープというものが出来てから伝承のありようが著しく堕落したという話を、文楽の某太夫から伺ったのはもう30年以上も前の話になる。テープがない時代は師匠が一度だけ語ってくれるのを真剣に集中して聴けたのに、テープがあると思うとどうしても真剣味が薄れてしまうのだといわれて、実にごもっともと納得した次第だ。
 歌舞伎でも古典物の初役に臨んで今やVTRを全く見ないで稽古する人はまずいないだろうと思う。これについて私が聞いた中で最高におかしかったエピソードは、10年以上前に某若手俳優がかの六代目歌右衛門にある役の教えを乞うたところ、その俳優があまりにも下手くそなのでさすがの歌右衛門も匙を投げ「ちょいとビデオくらい見てから来て頂戴よ」と怒ったという話である(笑)。
  最近では、これも某人気若手俳優が「素襖落」を好演し、これはVTRを何度も見た成果だったそうで、なぜVTRでなくちゃんと誰かに習わないのかとある人が注意したところ、紀尾井町の芸を今やだれに習うんですか?と反論されて、ああ、それは仕方ないかも……と思ったという、ちょっと深刻な話もありました。


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コメント (2)


今朝子さん、こんばんは。

先日「歌舞伎名台詞集」なるCDを入手しました。以前は筋書きの文字を追わねば台詞が聞き取れなかったのですが、このCDを繰り返し聞いていると耳が鍛えられるようで、最近はちゃんと聞き取れるようになってきました。
ちなみにこのCD、登場する尾上菊五郎は6代目ですから音源はSP盤です(笑)。これでは「小耳に聞いた音羽屋の・・・」が「CDで聞いた音羽屋の、似ぬ声色でぇ小ゆすりたかり」になりますね〜。現尾上菊之助も聞いているのでしょうかね?11月の新橋演舞場が楽しみです。

投稿者 中村屋ダン之助 : 2006年09月03日 03:42

六代目のせりふ回しって物凄くリアルでしょ?十五代目羽左衛門でさえ、現代の歌舞伎役者と比べたらはるかに写実であるのに以前聴いてビックリした覚えがあります。

投稿者 今朝子 : 2006年09月03日 22:10

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