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2006年08月24日

生ハムとルッコラのピザ、魚介のマリネほか

 国立劇場で市川流舞踊会「市川ぼたんお披露目」公演を観た帰りに伝統文化放送の前川さんと近所で食事。
 お茶の同門である堀越智恵子ちゃんは父君が市川団十郎、お兄ちゃんが海老蔵で、顔はふたりによく似ているが、性格は控え目でとても素直な、いかにも育ちがいいといった感じのお嬢さんで、お茶の稽古に最初に現れた日以来ふしぎと稽古場でよく会うから、何となく御縁のようなものを感じていた。その彼女が本格的に舞踊家として自立する覚悟で「市川ぼたん」を名乗るというので、これは応援かたがた駆けつけねばなるまいと思い、「鏡獅子」という大曲をどこまで無難にこなすか、まあ、若い女性のことでもあるし、鷹揚な目で観てあげようという気分で拝見したのである。
 ところがどっこい舐めてはいけない。これがなんと、ひいき目でなしに、近年になく素晴らしい舞台だったのだ。舞踊会に新たなスターが誕生した!と断言したいくらいである。
 まず、出からしていい。むろん当人が若いせいもあるが、御殿女中の処女らしい雰囲気がここまで出せる舞踊家はほかになかろうと思う。それでいて実に落ち着いた舞いぶりにびっくりさせられた。この若さと乏しい舞台経験で、これほどゆったりした間の取り方ができるのは、よほどの舞台度胸である。ひょっとすると度胸の点ではお兄ちゃんを凌ぐのかもしれないと思えるほどだ。2度ほど扇の扱いにミスが出たが、少しも動じることなく悠々と舞って見せた。しかも非常に表情が豊かで、そこはさすがただの舞踊家ではなく役者の血を引くというよりも、芝居や役者を身近に観ている利点であろう。素顔のつくりが派手なことも幸いしている。後ジテで隈を取った顔はさすがに団十郎の娘で、女性でこれほど隈の似合った顔を私は初めて見た。毛振りも腰から振れて数多くこなし、最後のキマリでは片足をしっかりとあげ、本当に彼女の今持てる力をすべて出し切ったパーフェクトの舞台だったように思う。甲子園の熱闘を観たような清々しい感動に包まれて劇場をあとにしたの私ばかりではあるまいと思う。


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